社会へ機能するビジュアルアーツ
版画はアートとデザインを結ぶ
版画はアートとデザインを横断する表現メディア「グラフィックアート」です。本やポスターをはじめ、あらゆる印刷物は版画によって作られてきました。例えば浮世絵は木版によって大量印刷され、ポスターやブロマイドとして広く大衆の手元に渡り親しまれたように、版画は絵画の表現手段だけでなく、情報伝達のメディアとしての機能も担ってきたのです。
本コースでは銅版画、木版画、シルクスクリーン、活版の伝統技法も大切に学びながら、イラストや漫画、絵本やZINE、ポストカードなど、商品開発やデジタル表現をも取り込み、現代社会と接続するグラフィックアートとして多様な展開を目指しています。そして、版画は印刷によってオリジナル作品の複製が可能なため、多くの人とリアルな作品でつながることができるコミュニケーションツールでもあるのです。
Feature
特徴
専門学修による高い表現力
1年次から銅版画・木版画・シルクスクリーン・活版の4種類の技法をしっかり習得します。その基本的な学びから、さまざまなフィールドを横断していくなかで自身の表現方法を見つけ、高い完成度へと導いていきます。
個々の資質にアートとデザインをつなぐ多様な展開
絵画にとどまらず、印刷メディアとしての側面を生かし、デザインも取り込んだイラストや絵本、 ZINE、漫画などさまざまな表現に挑戦し、自身の可能性を広げます。また小品販売やワークショップなど学びが社会で機能することも体験し、将来を見据え定めていきます。
社会へつながる汎用力
絵を描く他に、版を作る・刷るといった作業が加わるところに版画の面白さがあります。この職人的な要素は、表現を支える下地となるだけでなく、段取りや計画性といった物事を俯瞰的に考え、実行する能力へとつながります。版画で培った力は、アート以外のさまざまな仕事にも広く応用・展開できます。
Curriculum
授業紹介
版画をアートとデザイン両面から学び、自身の表現を展開させていきます。版画(印刷)が社会に果たしてきた役割や魅力を理解しながら、印刷メディアによって自身が何を表現したいのかを模索し実践していきます。
1年次
基礎を学ぶ
デッサンや彫塑などで基礎造形力を身に付け、版画の4つの基礎技法(銅版画、木版画、シルクスクリーン、活版)も学び始めます。一方で、さまざまなメディア表現も学修し、幅広く表現方法や素材に触れていきます。また、美術史などの講義を通して美術への理解も深めます。
洋画基礎演習2/銅版・木版・シルクスクリーン・活版それぞれの版の原理や技法を基礎から学び、印刷/版表現の特徴を理解していきます。
〈 講義 〉 | 〈 演習 〉 | 〈 実践 〉 | |
---|---|---|---|
前期 |
|
|
|
後期 |
|
|
|
2年次
フィールドを広げる
イラストやZINEなどのアートブック制作、2D/3DCGのデジタル演習など、印刷や複製をキーワードに、版表現の可能性を知り、自身のフィールドを広げていきます。また、卒業後の生き方について考える学びも始めます。
イラストレーション制作、アートブック制作/ビジュアルコミュニケーションであるイラストを学び、他者にメッセージを伝えることの意義を理解します。さらに、絵本や漫画、ZINE、詩画集など本の形態によるアートブック制作へと展開させ、版表現の可能性を体感していきます。
〈 講義 〉 | 〈 演習 〉 | 〈 実践 〉 | |
---|---|---|---|
前期 |
|
|
|
後期 |
|
|
|
3年次
応用し展開する
紙漉きによる素材研究や文芸学科と協働の画文集制作などを通じ、より深く表現について思考し制作します。展覧会やワークショップの企画・運営、ポストカードや名刺、Tシャツなどの商品開発によって社会との接続を図り、卒業後のビジョンも具体的に考えていきます。
紙制作、画文集制作/紙を自作、版や紙など版画制作に必要な素材から発想を展開させることで表現の幅を広げていきます。文芸学科学生との協働で画文集を製本し、全員の作品を一冊の本にまとめます。
〈 講義 〉 | 〈 演習 〉 | 〈 実践 〉 | |
---|---|---|---|
前期 |
|
|
|
後期 |
|
|
|
4年次
4年間の集大成
自らの進路を決定し、これまで培った力の総力をかけ、集大成としての卒業制作に臨みます。3年次までの学修から版技法を使って自身が何を社会に発信したいのか、テーマを定め、高い完成度を目指して制作します。
卒業制作/集大成としての卒業制作では、計画立案から途中の検証や修正も自身で主体的に行い完成に導きます。4年間の版画制作で培った能力を社会での自立と実行力につなげます。
〈 演習 〉 | 〈 実践 〉 | |
---|---|---|
前期 |
|
|
後期 |
|
Career
進路
Professor
教員紹介
中村桂子 コース長
Nakamura Keiko
教授/木版画、シルクスクリーン
過去から未来へ 版画が世界にできること
芸術には、国や言語の違いを越えて思いを伝える力があります。そのなかでも複数生産することが可能な版画=印刷は、宗教の布教、情報の共有、浮世絵木版画がヨーロッパに渡り、日本文化が西洋のアートやデザインに大きな影響を与えたように、社会と密接に関わり続けてきました。現代においても絵画作品をはじめ、本や漫画、Tシャツ印刷などのファッション、便箋や封筒などの生活雑貨の印刷に至るまで、実に幅広いシーンで版画=印刷は人に感動や豊かさ、楽しさを提供しています。
あなたのアイデアをデザインし、印刷というモノ作りを通してしっかりと形にすることは、あなたが社会とどう関わりたいのかを探っていくことでもあります。 災害や、病い、政治の対立など混迷の現代にあって、人が「つながる」「関わる」ことが強く意識されるようになりました。版画=印刷はそのなかで常に人の生活や社会のニーズに寄り添いながら多くの人に喜びを提供できるメディアなのです。