DEPARTMENT OF HISTORIC HERITAGE|歴史遺産学科

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歴史遺産学科

学生×教授対談 小味浩之(4年)×米村祥央 講師

米村
歴史遺産学科の卒展はポスター展示で作品制作ではないから、学生の方も力を入れていなかったけど、それを変えようとしたのが3年前。今年の卒展では、学会で発表するように自分の研究内容をポスターにまとめていますね。年々意識が変わってきて、今年は去年よりもっとがんばろうとしていて、いい傾向じゃないかな。
小味
今年度はポスターを貼りっぱなしにするより、歴史遺産学科の研究領域が一般の方からの「投票」という方法で評価や反応が見られていいなと思います。来年以降はわからないけれど、なにかの皮切りになってくれたらと思っています。
米村
投票してもらえると作る側も、見られる意識と研究内容を広い人に理解してもらおうとする意図が出るかもしれない。専門の学界とは違って初めて見る人ばかりだから、歴史遺産学科で学ぶと、いろんな分野と絡んでくるし、芸工大の中でも関係ないように見えてどの科とも関わっていて、他学科の視点も得られて楽しい学科。4年間、歴史遺産を研究してみてどうですか?
小味
いろんな分野がほとんど自分にあわないと感じてた時に、先生の授業で保存科学の話を聞いて、高校でやってきたことが無駄じゃないって感じました。大学に入学するまで保存科学は知らなかったんですが、今は、文化財が見える形になるまで、すごく多くの人が関わって、多くの人たちの気持ちも加わっているんだなと知りました。
米村
研究室に入って、最終的なテーマが、「水害にあった紙資料をどう残していくのか」。その研究を選ぼうと思ったきっかけは?
小味
もともと紙資料に興味を持っていたんです。紙はすごく身近にあるもので。水害って聞いた瞬間に、自分の中で思い出のような何かが蘇った経験があって。
水害の時に、ごみとして大量に紙は出る、どうしようもないから捨てるしかない。自分が仮に水害が起こった場所にいて、避難しなければならなかったら、あれもこれも残すようには動けないと思うんです。まずはライフライン、その次に残さなきゃならないのが、住民票や台帳だったり。そういうのは完全に20世紀に入ってからつくられた紙。紙を作ることの研究はやるけれど、残すことの研究は和紙よりもされない。だから紙は研究しがいがありますね。
米村
そういうところに興味を抱いていくのは大事なんじゃないかな。未知なことを研究したから小味君も大変だったと思うけれど。実験も相当量やったし。何かを調べるとき、この分野以外からも考えた?
小味
主に生物学であったり工業的な分野であったり。
米村
そこが良かった。どうしてもこの分野だけで考えてしまうとなかなか発展しなくて。多分他の研究室やコースもそれが言えると思うんだよね。同じところだけでやっていると新しいものがわからないけれど、ちょっと違う目線から見ると新しいものが見えてきたり。今回の経験をこれからも意識して研究してほしい。
――
歴史遺産学科の研究について
小味
卒論の対象の中に東北が含まれなくても、勉強している中で絶対、東北が関わってベースになっていると思う。調査は、まず山形県内で勉強してからあちこちに行くことも多かった。
米村
歴史遺産学科の中で、僕らの研究室というのは、サイエンスが特色でもある。科学の場合は真実、事実、現象を明らかにする。例えば作文を読む時、人によって感じ方は違うけれど、科学の研究室でやることは、出た結果を誰もが共有できるようにする。それはいろんな人に訴える力となる。「事実」になって、色んな人や、社会の中、文化財に関わる環境なり、もしかしたら次世代の教育に関わるかもしれない。彼がやったことがもしかしたら将来教科書に載るかもしれない。
小味
15年後くらいに(笑)
――
「水害にあった紙資料をどう残していくか」について
小味
和紙どうしは、水で濡れて乾燥してもくっつかないんですよ。でも今のダイレクトメールやチラシ、本、書籍全般は、水にぬれて乾燥すると紙同士でバリバリにくっついてしまうんです。それがなぜかを解明するのが研究テーマです。仮説はあるけれど、それはまだ証明されていない。紙の種類も世界で云千云万種類あって、例えば和紙の原料は主に楮(こうぞ)など3、4種類くらいしかない。でもこういう用紙(ダイレクトメール、チラシなど)に関しては木材パルプでつくられていて、針葉樹、広葉樹の数だけある。また、木材でないものも入っているかもしれない。配合パターンも何がどれだけ入っているかは自分で調べるしかない。執念深くやるしかないですね。でも最近「何がどれだけ入っているか」ということだけ見ていたら、なかなか最終局面にならなくて、連続してかきこまれる状況になりました。それを先生に相談したら、見るべき対象が他にもあるから次のステップへ行きなさいと。
――
実験の進め方
小味
水害によっては完全に泥水に浸りますから、まずはその泥とかカビを排除すると紙がどういうものか見えてきます。
米村
実験で起こる現象は複雑で難しく、条件が多すぎると複雑過ぎてわからない。1つ1つ因果関係を明らかにして、少しずつ実験を増やしていきます。
小味
自分が考えている所まで行こうと思います。
米村
研究内容はこれくらい(※研究室にB0程の研究ポスターが貼られている)じゃおさまりきらないでしょうね。それと、ここに張り出しているのは学会のポスターなので、内容は少し難しい。卒展では分かりやすく、何をやっているのか、みんなに興味を持ってもらえれば。
小味
単純なことだけれどみんなが言っているのは、それをどう残して、いかに活用していくかの2つです。残し方と伝えるための方法を、今後も考えていきたいです。
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