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MUSEUM

学長からのメッセージ

ミュージアム
のような4年間

東北芸術工科大学学長
中山ダイスケ

中山ダイスケ/アーティスト、アートディレクター。アート分野ではコミュニケーションを主題に多様なインスタレーション作品を発表。1997年よりロックフェラー財団、文化庁などの奨学生として6年間、NYを拠点に活動。1998年第一回岡本太郎記念現代芸術大賞準大賞など受賞多数。1998年台北、2000年光州、リヨン(フランス)ビエンナーレの日本代表。デザイン分野では、舞台美術、ファッションショー、店舗や空間、商品や地域のプロジェクトデザイン、コンセプト提案などを手がける。2007年より本学グラフィックデザイン学科教授、デザイン工学部長を経て、2018 年より東北芸術工科大学学長。

ミュージアムで学ぶ

 東北芸術工科大学で過ごす4年間は、人生の中でも特別な密度をもった時間です。ただ授業を受け、課題をこなすだけの時間ではありません。それは、まるで一つの壮大なミュージアムの中に身を置き、生きるような、かけがえのない時間です。

 キャンパスに足を踏み入れた瞬間から、あなたは展示を見る側であると同時に、展示の一部にもなります。アトリエは制作の現場であり、同時に展示室でもあります。友人の未完成な作品、先輩の思考の跡、先生の何気ない一言。そのすべてが、ガラスケースに収められていない「生きている展示」として、日常の中に存在しています。正解も完成形も、ひとつではありません。迷い、立ち止まり、やり直すプロセスそのものが、ここでは価値を持ちます。

 デザインとは、単に美しいものをつくる技術ではありません。それは、人の暮らしを観察し、社会の課題に目を向け、「なぜこうなっているのか」「本当にこれでよいのか」と問い続ける姿勢です。アートとは、感情や記憶、時代の空気をすくい上げ、言葉では届かない場所へと手を伸ばす行為です。歴史研究とは、過去の作品や思想を学ぶことを通して、今を生きる私たち自身を深く理解することにほかなりません。そしてアイデアとは、知識と経験、失敗と偶然が結びついた瞬間に、静かに、しかし確かに生まれるものです。

正解のない学び

このミュージアムでは、時間の使い方も自由です。何時間も一つの作品の前に立ち尽くしてもよいし、通り過ぎたあとに、ふと心を奪われることもあるでしょう。感動する作品だけでなく、理解できないものや違和感を覚えるものに出会うことも大切です。それらはすべて、あなたの感性を広げる展示なのです。さらに、このミュージアムの面白さは、静かに鑑賞するだけでは終わらないところにあります。あなた自身が見る側であると同時に、見られる側にもなるのです。未完成な作品を人に見せること、考えが定まらないまま言葉にすることは、ときに怖さを伴います。しかし、その不安ごと差し出す経験が、感性を深く鍛えていきます。

高校生・受験生の皆さん。「自分には特別な才能がないのではないか」「アイデアがすぐに浮かばない自分には向いていないのではないか」そう感じている人もいるでしょう。しかし、本学が大切にしているのは、最初から完成された表現力ではありません。わからないことに立ち止まり、考え、調べ、試し、失敗し、それでもなお、もう一度挑戦しようとする力です。

東北芸術工科大学は、才能を選別する場所ではなく、可能性を育てる場所です。静かにゆっくりと何かを読み解く人も、せっせと手を動かしながら答えを探す人も、突飛な発想で周囲を驚かせる人も、そのすべてが、このミュージアムの大切な一部です。高校までの「正解がある学び」とは異なり、ここでは迷う時間や遠回り、失敗までもが尊重されます。理解できない作品に出会うこと、他人と比べて落ち込むこと、自分の表現が揺らぐこともあるでしょう。それらすべてが、あなたの中に新しい視点を収めていく展示体験なのです。

ミュージアムから旅立つ時

 4年後、あなたはこのミュージアムを出ていきます。
しかし、そこで見たもの、心が動いた瞬間、違和感を覚えた記憶は、確かにあなたの中に残ります。芸術大学を目指すということは、技術を学ぶ覚悟であると同時に、この濃密な時間を生きる覚悟を持つことです。その扉は、挑戦する人の前に開かれています。
保護者の皆さまへ。この4年間は、成果がすぐに見えにくい時間かもしれません。しかし、ここで培われる「考える力」「問い続ける姿勢」「自分の言葉で表現する力」は、どの時代においても色あせることのない、確かな力となります。お子さまが自分自身の価値観を見つけ、世界と向き合うための準備期間として、どうか信じて見守ってください。

ミュージアムを歩くとき、人は答えを急ぎません。一つの作品の前で立ち止まり、考え、心を揺らし、自分なりの意味を見つけていきます。芸術大学での4年間も、まさにその連続なのです。
恐れずに、このミュージアムへ来てみてください。挑戦する意志を持つあなたを、私たちは待っています。

可能性は、特別な誰かの中にあるのではありません。「表現したい」「知りたい」「考え続けたい」と願う、すべての人の中に、確かに存在しているのです。