先生とつくる、デザイン選手権大会

松田宏美先生

松田宏美先生 | 山形県立新庄神室産業高等学校 環境デザイン科

デザセンへの取り組み

本校では、デザイン選手権に第1回(平成6年)から「課題研究」のテーマのひとつとして取り組んでいます。その理由は、生徒の課題を解決する能力を育み、自ら学び自ら考える学習態度を養う「課題研究」のねらいが、「デザイン選手権」の取り組みによって達成できるからです。このデザイン選手権によって、自己教育力を身に付けた生徒が、将来の社会の変化に主体的に対応してくれることを期待しています。

テーマの設定

デザイン選手権については、まずはじめに4月最初の課題研究ガイダンスで概要を説明し、希望者を募ります。1チーム3人となるように希望を募りますが、毎年6~9名の生徒が希望し、2~3チームが編成されます。
作品制作にあたっては、週3時間の課題研究の授業が基本ですが、時間的にそれだけでは足りないので、放課後や夏休みに取り組むようにしています。

デザイン選手権で一番重要かつ時間を費やすのがテーマ設定です。「社会問題をデザインによって解決する」ことができそうなテーマを検討します。環境問題・国際問題・政治問題・経済問題・医療問題・教育問題や地域問題など、いかに多くの人々を幸せにできるか、笑顔にすることができるか、「人の心をデザインする」ことが鍵になります。

デザセン2007の入賞チームメンバーと。新庄神室産業高等学校の前身「新庄工業高等学校」は、記念すべき第1回大会で優勝を果たしています。そして、松田先生は優勝メンバーのお一人でもあります。

デザセン2007の入賞チームメンバーと。新庄神室産業高等学校の前身「新庄工業高等学校」は、
記念すべき第1回大会で優勝を果たしています。そして、松田先生は優勝メンバーのお一人でもあります。

デザインプロセス

a. コンセプトワーク

ア「社会問題をデザインへ発展させる(拡散)」

新聞記事や日常生活などから考えられる社会問題や日常の問題から連想するキーワードをカードに書かせ、マトリックスをつくります。この段階では、解決できるかできないかの結果を考えないで、なるべく多くのキーワードを挙げさせます。具体的には1人で30個のキーワードを考えるように指示しています。

イ「着目した問題点についてのテーマをしぼる(収束)」

問題点をまとめ、それらを解決するにはどのような手立てがあるか方向性を定めます。社会的に意味があり、具体的で必要とされるテーマを2~3個にしぼっていき、デザイン化できるか検討します。

ウ「コンセプト化」

コンセプトを決定し、具体的な方針を立てます。
コンセプト化にあたっては次の点に考慮します。
・社会性が高く、社会問題を改善できるものか
・デザイン上、「起承転結」が確立しているか

 起……現状に対する不満や問題点は何か。問題点があるからデザインが発生する
 承……テーマ、目的。デザインの必要性
 転……アイデア。どんなデザインか
 結……どんな効果をもたらすか

・具体的なもので、生活者にメリットとして受け入れられるか
・必要であるが、なかなか手に入らないアイデアを持つものか
・生活者に負担を与えないものか

デザセン2009で準優勝した『食べる絵の具 ハピ・ベジ』チームは、朝の生放送番組にも出演。

デザセン2009で準優勝した『食べる絵の具 ハピ・ベジ』チームは、朝の生放送番組にも出演。

b. デザインワーク

ア「アイデアスケッチ」

次に、コンセプトに沿ってアイデアを展開します。主に次の点に考慮しながらアイデアスケッチを行います。
・コンセプトとイメージしたものが合致しているか
・スケッチはなるべく言葉を使わないで、第三者にコンセプトが伝わるようにする

イ「アイデアの決定」

スケッチのいろいろな要素をまとめてひとつのアイデアにします。生徒3人と指導教員とで、より良いアイデアを求めてディスカッションを重ね、クラスメイトや先生方からも意見をいただきながらアイデアを決定します。

ウ「出品用ボードの作成」

出品用ボードをコンピューターで作成します(使用ソフトはイラストレーター)。大型プリンターでA2版に出力し、ボードに貼付します。

取り組みによって得られるもの

取り組みによって得られるもの

デザイン選手権の取り組みは、生徒自らが立てた目標の達成に向けて、一つひとつ階段を上るように課題をクリアしていかなければなりません。その過程で身に付く教育的効果を以下に述べます。

・普段の授業では触れることのできない世界や社会問題を調べていくうちに、社会と自分たちの関わりに気付き、毎日の暮らしを見つめ直す姿勢を身に付けることができる

・チームワークの必要性により、コミュニケーション能力が増し、相手を思いやる気持ちを持つことができる

・最後まで努力することの大切さを身に付け、全部終わった後の達成感と自信を得ることができる

・社会が求める創造性や自己表現力を持った人材を育成することができる

デザセン2010で入賞した『ポジションバッチ POTCH』チームのメンバーと。

デザセン2010で入賞した『ポジションバッチ POTCH』チームのメンバーと。

今後の課題・抱負

デザイン選手権では、多くの高校生が持ち合わせている柔軟な発想やアイデアが具現化されています。この一つひとつのアイデアが、社会や暮らしのなかで実用化されることによって「多くの人々を幸せにし、みんなが笑顔になる」、そんな世界を築いてほしいと思います。そして、デザイン選手権へ取り組む前に比べて、生徒が大きく成長した姿を見たときに、この体験を活かし、次の時代を担う人材に成長してくれるのではないかと期待します。

最後に、来年度は決勝大会に出場できるよう、私自身も日々の生活にアンテナを張り、生徒に「新しいか、楽しいか、誰を幸せにするか」を教えていきたいと思います。

山形県立新庄神室産業高等学校

山形県立新庄神室産業高等学校

2003年に山形県立新庄農業高等学校と山形県立新庄工業高等学校が統合して開校。松田先生ご担当の環境デザイン科のほかに、生物生産科、生物環境科、機械システム科、電気システム科があります。
〒996-0051 山形県新庄市大字松本370

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