神秘の樹と明日の鳥たち|詩・旅・思索

design:鈴木敏志(JEYONE)

美術館大学構想シンポジウムvol.2

神秘の樹と明日の鳥たち|詩・旅・思索

東北芸術工科大学では、美術館と大学の機能を融合させ、地域に根ざした芸術文化創成を試みる『美術館大学構想』に取り組んでいます。その活動の指針となるテーマについて語り合う、美術館大学構想シンポジウムの第2弾として、構想委員長の酒井忠康氏を座長に『神秘の樹と明日の鳥たち|詩・旅・思索』と題する鼎談をおこないます。
柳田國男のテクスト『傳説とその蒐集』を頼りに、風土に育まれた創造性の〈根付き〉と〈漂白〉をテーマに語り合う今回は、詩人の吉増剛造氏と、東北に詳しい民俗学者の赤坂憲雄氏をお招きし、「柳田民俗学」の体系に埋め込まれた風土への凝視の作法を批評的に検証するとともに、その眼差しが現代の芸術表現や、共同体を喪失した現代人のアイデンティティーの「根」を成す可能性について探っていきます。
現代の吟遊詩人と、東北を歩き続けた民俗学者が、この土地に根ざした新しい文化創造の可能性を呼び起こす言葉の実験、120分です。

  • 日時=2006年10月28日[土] 15:00−17:00
  • 会場=こども芸術教育研究センターこども劇場
  • パネリスト=赤坂憲雄(本学大学院長/東北文化研究センター所長)/吉増剛造(詩人)/酒井忠康(世田谷美術館館長/本学大学院教授)

●関連イベント

  • ○シンポジウム開催記念舞踏公演『彫刻風土|時の溯上』
  • 飯能の山間に工房を拓き、土地の抱える記憶を造形化し続ける孤高の彫刻家・西雅秋。雪深い山形県大蔵村で一村人として生き、身体民俗学を探求する異能の舞踏家・森繁哉。里山に棲み、その共同体の黄昏と野性的自然を引き受けながら常に〈つくること・表現すること〉のゼロ地点に立ち返り続ける2人の前衛が「私」の限りある時間・身体は、この風土に何を残し得るか? という命題を、海上を還流する一本の樹のイメージに託して、〈彫刻〉を踊り、〈舞踏〉を造形します。
  • 主催=東北芸術工科大学
  • 企画=東北芸術工科大学美術館大学構想室
  • 彫刻=西雅秋(彫刻家)
  • 舞踏=森繁哉(舞踏家/本学教授)
  • 会場=水上能舞台「伝統館」
  • 日時=10月28日[土] 開演17:30
  • 制作協力=坂田啓一郎/東北文化研究センター
  • 学生スタッフ=石亀泰広/菅野あすか

●パネリストプロフィール

吉増剛造 Gozo Yoshimasu

1939年東京都生まれ。慶應義塾大学国文科卒。詩人。在学中から『三田詩人』『ドラムカン』を中心に旺盛な詩作活動を展開、以後先鋭的な現代詩人として内外で活躍、高い評価を受ける。主な詩集に『出発』(新芸術社 1964)、『黄金詩篇』(思潮社 1970)高見順賞、『頭脳の塔』(青土社 1971)、『草書で書かれた、川』(思潮社1977)、『熱風』(中央公論社 1979)、『オシリス、石ノ神』(思潮社1984)現代詩花椿賞、『螺旋歌』(河出書房新社1990)詩歌文学館賞、『花火の家の入り口で』(青土社 1995)、『「雪の島」あるいは「エミリーの幽霊」』(集英社 1998)芸術選奨文部大臣賞、『ごろごろ』(毎日新聞社 2004)、『何処にもない木』(試論社2006)などがある。文学・芸術に関する評論も多い。朗読や現代美術や音楽とのコラボレーション、写真などの活動も意欲的に展開している。

赤坂憲雄 Norio Akasaka

1953年東京都生まれ。東京大学卒。現在、東北芸術工科大学大学院長、同大学東北文化研究センター所長。専門分野は民俗学・東北文化論。山形、さらには東北一円をフィールドとして、みずからの足で歩き、みずからの眼で見て、みずからの耳で聞く作業を続けている。東北の小さな民の具体的な歴史を掘り起こし、歴史以前の闇のなかに埋もれた〈もうひとつの東北〉を浮き彫りにしながら、東北学の構築をめざしている。主な著書に、『異人論序説』(砂子屋書房1985)、『排除の現象学』(洋泉社1986)、『山の精神史』(小学館 1991)、『遠野/物語考』(宝島社 1994)、『漂泊の精神史』(小学館 1994)、『柳田国男の読み方』(ちくま新書1994)、『物語からの風』(五柳書院 1995)、『東北学へ』3部作(作品社1996〜98)、『山野河海まんだら』(筑摩書房 1999)、『海の精神史』(小学館2000)、『東西/南北考』(岩波新書2000)、『一国民俗学を越えて』(五柳叢書2002)などがある。

酒井忠康 Tadayasu Sakai

1941年北海道生まれ。1964年慶応義塾大学卒。1964年神奈川県立近代美術館勤務。1992年館長。2004年同館顧問。世田谷美術館館長に就任、現在に至る。その間、数多くの企画展を担当。全国美術館会議理事。美術館連絡協議会理事長。国際美術評論家連盟会員。日本近代の美術史に造詣が深く、芸術家の風土性や気象をベースにした美術評論に特色がある。目下、パブリック・アートの現状について調査中。1986、1988年ヴェニス・ビエンナーレのコミッショナー。1989、1991年サンパウロ・ビエンナーレのキュレーター。多数の著作・著書の主要なもののうち日本近代美術史に関するものとして『海の鎖─描かれた維新』(青幻舎2004)、現代彫刻に関するものとして『彫刻家への手紙』(未知谷 2003)、美術館活動に関するものとして『その年もまた─鎌倉近代美術館を巡る人々─』(鎌倉春秋2004)などがある。

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