岡田七海|古墳整備におけるガイダンス施設の役割 ─壬生古墳群整備からの検討を通して─
栃木県出身
北野博司ゼミ
私の故郷、栃木県壬生町では壬生古墳群(車塚古墳・牛塚古墳・愛宕塚古墳)の保存活用計画を策定しガイダンス施設の設置を必要とした(図1)。本研究ではそのガイダンス施設の機能について他国指定史跡と比較し検討していく事を目的とする。また古墳及び史跡整備におけるガイダンス施設の果たす役割についても考えていく。
壬生古墳群は現在史跡公園のような整備は無く、管理する町立歴史民俗資料館は遠距離かつ人手不足の状態である。「みぶ古墳群解説ボランティアの会」に管理を一部委託するにも活動減少・拠点不足から会の強化及び環境作りが必要となる。比較する史跡は4事例を中心として調査した。その1つである栃木県小山市の「国史跡 摩利支天塚・琵琶塚古墳資料館」 (図2)では中身が見える収蔵庫や壁の古墳の模型を用いた導入展示を行う多目的ホールが設置されていた。加えて月1回ボランティアによる定期解説会が実施されている。また山形県天童市の「⻄沼田遺跡公園」では「ぬまりん館」を拠点にNPO法人による維持管理、イベント等が行われていた。法人内では月1回のお便りや定例会により「意見交換→実現」のサイクルが出来上がり会員内で良好な関係が築かれている。
以上の調査より、壬生古墳群のガイダンス施設には保存活用計画で構想された6つの機能(展示・体験学習・調査研究・管理・駐車場)に加え、ボランティアの拠点機能、町民に親しまれるよう多目的に使える設備を提案する。試案として平面図(図3)を作成した。摩利支天塚・琵琶塚古墳資料館の多目的室のアイデアより町のイベント等に多目的に使える体験学習室を設置した。ボランティアの拠点には、会の現状より休憩スペースかつ気軽に集まれる意見交換の場として設置し、今後のボランティアの会の活動改善に繋げる。更に施設の東(古墳)側に大きな窓ガラスを設置する事で古墳が眺望可能となり、野外と繋げた活用も可能とした。
古墳含め史跡の保存活用及び整備にはそれを行う「場」と支える「人」がどちらも必要である。そしてガイダンス施設は、本質的価値を学び活用の幅を広げ、史跡に関するあらゆる活動の拠点として、人と史跡を繋ぎ、官民協働で史跡を守る為の「場」を提供する事が出来る。地域社会総出の文化財継承が推進される今、地域社会において史跡やその保護に関わる人々を繋ぐ拠点として、今後もその効果が期待される。