建築・環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

遠藤あすか|「曖昧性」から評価する戸建住宅地における街並みデザインに関する研究
宮城県出身
渡部桂ゼミ

 本研究では、戸建住宅地における公私を結ぶ曖昧な空間領域に着目した。1970年代以降に開発が進められた計画戸建住宅地では、緑道やコモンスペースなど個人の敷地に接する公的空間に様々な工夫が為されている。この曖昧な空間領域、主に戸建住宅地における住戸の前庭と区画道路を「中間領域」と捉え、中間領域を評価するための評価項目を作成し、既存住宅地に適用・検証しデザインの可能性を探ることを目的としている。中間領域を住宅地に計画することで、豊かな景観形成やコミュニティ形成に繋がり、安心して住み続けることのできる街が形成されるのではないかと考えている。研究方法は、中間領域の概要として定義付けとタイプ分類を行い、中間領域の評価項目の抽出と評価シートの作成にあたっては、雑誌調査より近年のデザインの傾向を分析し、重要な評価指標を見出した。

 中間領域のタイプは所有形態と空間形態の2点より分類でき、大きくは中間領域無し、私的開放型、公私接続型の3つである。私的開放型はさらに4種類、公私接続型はさらに3種類のタイプに分類できる。また、中間領域を評価する上で重要と考えられるポイントは、「景観形成」「コミュニティ形成」「環境形成」の3点であり、一般的に、中間領域の豊かさとは、人間の活動の豊かさに直結するという考え方があることが分かった。この考え方やデザイン事例より得た計画手法を基に、今までに無かった「中間領域の評価シート」を作成、既存住宅地の評価・検証を行うことで、評価が高い場合と低い場合の特徴を見出すことができた。中間領域の特徴である「曖昧性」には「緑」 や「開放性」が深く結びついている。この「開放性」により、中間領域は視覚的な認知空間と捉えることができることがわかった。開放的な外構は、不思議と他人の敷地もまるで自分のもの(領域)であるかのような錯覚を起こし、視覚的に空間が拡張する。そこに緑の統一性や連続性が加わると、人間の認知空間はさらに曖昧にぼかされ中間領域は形成されると整理することができた。