大学院Graduate School

鈴木大翔|副葬専用の石鏃の判断 ―石鏃の形態差と規格差からの検討―
宮城県出身
青野友哉ゼミ

北海道続縄文期の墓坑では副葬を目的として石鏃が製作されていた可能性が考えられる。本研究では、北海道続縄文期の墓坑底部から出土した石鏃を対象とし研究を行う。出土した石材や形態の特徴や、規格の統一性から副葬専の石鏃の認定条件を確立し、対象遺跡のいつの時期に出現するのかを明らかにすることが目的である。
石材と形態の変化では、道南部の瀬棚南川遺跡とアヨロ遺跡では硬質頁岩製が主体であり、形態は有茎石鏃が主体を占めるが時期が進むと無茎石鏃の割合が増加する。一方、道央部の大川遺跡では黒曜石製が主体であり、形態は時期が進むと有茎石鏃が減少し無茎石鏃が増加する。同じ道央部の紅葉山33遺跡では無茎石鏃が主体であり、時期が進むと有茎石鏃と硬質頁岩・頁岩製の石鏃が増加する。
道南部の2遺跡で硬質頁岩製から黒曜石製へ石材が変化する。一方、道央部では黒曜石製が主体であり、時期が進むと硬質頁岩製・頁岩製が増加する。石材と形態では黒曜石製は無茎石鏃が多く、硬質頁岩・頁岩製は有茎石鏃が多く確認できた。
規格の統一性では石鏃の最大長と最大幅(図1)から統計学的手法である分散を用いて分析を行った。分散は、数値データのばらつき具合を表すための指標であり、本研究の対象である石鏃に置き換えると出土した石鏃が一定の規格に揃っているか否かを表すことができる。分散の結果からは、分散が小さい(規格が近い)グループはあるが、石鏃の点数によりバラツキが見られ分散の数値が低くい例が多い。だが、小型の石鏃のまとまりと数点の長身の石鏃が出土するグループが多くこの場合でも分散は大きくなる。この例が見られる墓坑では意図的に規格が異なる石鏃を数点副葬した可能性が高いと言える。
分析の結果、副葬専用の石鏃だと考えられるのは長身の石鏃である可能性が高いと言える。1例としてアヨロ遺跡で墓25のグループAの石鏃(図2)では、長さでグループAとBの規格(図3)が分かれる。グループBに対してグループAでは全点が長さ4.5㎝を超えており、規格もまとまりがある。また、アヨロ遺跡の他の墓坑では長さ4.5㎝を超える石鏃が出土していないことから、グループAの石鏃は副葬専用の可能性が高いと言える。

1. 石鏃の計測箇所

2.墓25グループごとの石鏃

3.グループごとの石鏃の長さと幅の散布図