国際化する大学病院のサスティナブルデザイン

レポート 2020.05.11|

施設の増改築などで迷路のようになってしまう大学病院。検査室や研究室までの行き方を詳しく説明しようと継ぎ足しされた案内表示には統一感がなく、かえって複雑なものになりがちです。

今回、国内外からの重病患者、研究者や医療関係の方が、それぞれ目的の場所までスムーズにたどり着くための「院内サイン」を、サスティナブルな視点で刷新した本学と山形大学の協働プロジェクトをレポートします。

 巨大迷路のような大学病院 

「地域に根差した病院」と「医療の国際化」が同居する大学病院ならではのこの課題。山形大学医学部(山形市)では、国立大学法人山形大学の大学院を1973年に設立以降、令和元年にも「重粒子線がん治療」を核とした最先端医療を開始するなど、医療インバウンドを視野に入れた国際化も図ってきたことで、来院者からは「表示に統一性がない」「手作りの案内表示がベタベタと貼られ情報量が多すぎる」「全体に見通しがつかない」「床の誘導線が途中までしかない」などの声がありました。

誰にでも分かりやすい院内サインの必要があると考えた嘉山孝正(かやま・たかまさ)山形大学医学部参与は、「山形大学医学部付属病院国際化対応委員会」を2017年5月に立ち上げ、「院内サイン」「文書の多言語化」「各種患者サービス」「日本国際病院の認証」の4つの専門部会を設置。欠畑誠治(かけはた・せいじ)山形大学附属病院副病院長(国際化担当)からの依頼を受け、本学グラフィックデザイン学科の原高史(はら・たかふみ)教授 が、国際化に向けた院内サインの監修を手掛けることとなりました。

原教授はコミュニケーションアートを国内外で手掛けるアーティストでもある。

芸大生と医大生がチームを組み院内調査
読むストレスから解放された、感覚的なサインへ

建て増しを重ねた病院の案内掲示は、丁寧に説明しようとするほど分かりにくくなっていました。そこで本学学生たちと山大医学部の学生たちで7~8名のチームを組み、病院内での調査とヒアリングを重ね、新たな院内サインの立案を進めていきました。

そして、完成した新しい院内サインがこちら。
各部門がおおおまかに色分けされ、100メートル先でも目的地を容易に把握できます。大胆にデザインできた理由について原教授は「『普通ではない感じにしたい、サインとして分かりやすいだけだとつまらない』という欠畑教授の意向もあって、従来の病院の暗いイメージを払拭した明るく楽しい色とデザインで展開しました」と話します。

一方で、来院者と病院スタッフとの温かなコミュニケーションも失わないよう、これまでもスタッフの方が行っていた案内をよりしやすくするための「手持ちフォルダー」も制作しました。

目的地を示す矢印を記載した「透明シート」。差し込むことで、一瞬で道順を伝えられる。

入院患者と家族が貴重な時間を過ごす場所

無機質だった場所に温かな色やメッセージ、モノを設置することで、サイン計画以上の出来事と明るい風景が院内で起こり始めます。

「思い切った変革には賛否両論があると思いますが、車椅子の患者さんがご家族と出てきたりする風景を見て、このプロジェクトを手掛けることができて本当に良かったと感じています」と原教授は続けます。

この他にも、ステンドグラスでカラフルな光が差し込む食堂や、コンビニ、理美容、銀行、郵便局、花屋などもある「YUMe TOWN」を設計。入院患者の方はもちろん、お見舞いにくるご家族や友人、恋人との時間をゆっくり楽しく過ごせる街のような場所です。これらの「YUMe Garden」「YUMe TOWN」と並行して、アートを展示する「YUMe Gallery」も構想中です。

がん治療の苦しみが”戦う勇気”に変わるように

がん治療を行う患者さんたちの苦しみを少しでも「戦う勇気」に変換できるように、重粒子線がん治療を行う「重粒子センター」(本記事のトップ掲載写真/スペースシップのようなイメージ)のサイン計画も進行中。「信頼感・安心感・先端性・未来性・宇宙・旅」など、これまでに無かった病院のイメージを取り入れる予定です。
(以下の写真は計画中のイメージ図/上:ロビー、下:治療室)。

(取材:企画広報課・樋口)

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東北芸術工科大学 企画広報課
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