自分らしく生きる以上、”自分も楽しく”を大切に。/菅原詩音(コミュニティデザイン学科4年)

インタビュー

近年、大学生たちの日常的なコミュニティから、まちづくり活動が多々生まれています。

コミュニティデザイン学科4年生の菅原詩音(すがわら・しおん)さんもそうした活動を行う一人。仲間たちに得意な事を生かしてもらいながら、マルシェの企画を行ったり、個人事業主としてお菓子の製作と販売を行う「空と糸」を運営しています。

2020年4月に仙台定禅寺通りで開催予定だった「SHARE marché」も、菅原さんがリーダーとなって企画立案をまとめ、準備を進めていましたが、このコロナ禍で中止となりました。それでも、これまでの仲間たちと共に前向きに活動を続ける姿があります。今回はそんな菅原さんが、人とのつながりやマルシェに関わるようになった経緯をインタビューしました。

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――菅原さんが人とのつながりを意識し始めたのはいつ頃からですか?

高校時代だったと思います。いじめに遭って心が病んでしまい、人生に絶望する経験をしました。

小学校からストリートダンスを続けていて、それなりの経験値もあったので、高校でダンス部の部長とダンスリーダーの両方に選出されて兼務したことで、部員からの嫉妬を受ける要因になってしまいました。

今まで友達だと思っていた人からだんだん無視されるようになってそのまま不登校になり、4ヶ月間も自宅の自室に引きこもりました。自分自身もこのままではだめだと思っていた頃、母の知人のアメリカ人の方からダンス留学をしてみたら?と誘われて、思い切ってアメリカへ行きました。

自分の事を誰も知らない異国で生活しながらダンスを踊れる身体が徐々に戻ってくると、「自分はまだやれる」という感覚も取り戻しました。人に関わりながら人に救われる経験をした時、人と人とのつながりに興味が湧いてきて、世界が開けていったように思います。

菅原詩音
「BROADWAY DANCE CENTER」(ニューヨーク・ブロードウェイ)でダンスレッスンを受けている様子。引きこもり生活直後のため、この頃、体重は72kgもあったそう。

――マルシェには関わり始めたのは?

アメリカで自分の自信を取り戻し、帰国して舞台表現を学ぶ高校に転校していたのですが、マルシェには高校3年生の時から関わり始めました。

スタッフの方に誘っていただき、2日間で約10万人もの方が訪れる「GREEN LOOP SENDAI」(仙台市/主催:SDC株式会社)で、毎年ボランティアスタッフをしていました。コーヒーフェス、ブレッドフェス、ファーマーズなど複数で構成されているフェスで、大学3年まで、コーヒーフェスをメインに手伝っていました。

菅原詩音
「GREEN LOOP SENDAI 2017」にて。往来の方々にフライヤーを配布。

――何故、芸工大でコミュニティデザインを学ぼうと思われたのですか?

進路を決める時期に芸工大のオープンキャンパスに来たことがきっかけでした。

その時はまだコミュニティデザインのことがよく分かっていませんでしたが、白いキャンバスに絵を描くというものではなく、「地域を活性化する」や「人のつながりをつくる」事に何とも言えない魅力を感じて、この学科に入りたいと思いました。

――人とつながる、新しい方法が開けた感じですね。

そうですね。それと、仙台市内の商店街の中で、ご近所さんとたくさんのつながりがある中で育ったことも、もう一つの要因かもしれません。

幼い頃から頻繁に通っていた秋田の祖母の住む地域が、少子高齢化に悩む街で、お祭りの時には全国から大勢の人が訪れて賑わうのに、普段は道を一人も歩いている様子のない風景を、幼心に疑問に感じていました。こうした出来事もコミュニティデザイン学科を選ぶきっかけになったと思います。

菅原詩音
昨年の冬に秋田の祖母の家に帰省した時の写真。秋田名物の「きりたんぽ鍋」を家族で囲む。

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――コミュニティデザイン学科での活動は、菅原さんにとってどのような場でしたか?

この学科は、学生たちが山形県内外に出向いて、地域の皆さんと関わりながらコミュニティデザインの力を学びますが、私はおばあちゃん子で人懐っこいからかもしれませんが、地元の方々に可愛がられながら多くを学ばせていただいたように思います。

またコミュニティデザイン学科の先生が、資料を紹介してくれたり、「詩音ならできるよ」といつも熱く応援してくれました。何かを始めれば支えてくれる安心感の中で活動できたことが、今の私にとってとても大きかったと思います。

菅原詩音
菅原さんの担当地域(山形県最上郡金山町)で、地域に伝わる昔話を題材に、地域のお母さんたちと作成した紙芝居の発表会。お子さん連れの方、地域の方にたくさん来ていただき、地元の魅力を再確認する機会を創出した。

自分が生み出したものを
「おいしい」と言ってもらえる価値

――事業主になるきっけかけは?

私の周りの友人たちは、起業をしていないだけで自分の得意な技術でお金を生み出していたので、アルバイトをするだけが学生がお金を得る方法ではないと思いました。

単なるアルバイトとは違って、全てを自分の力で生みだしたものに、「おいしい」「素敵」と言ってもらってお金を得ることは、私にとって相当な価値と喜びがあったことも、大きな理由です。

菅原詩音
「GREEN LOOP SENDAI」の1つで運営から販売までを学生だけで全て行う「SHARE marché」ミーティング風景。この日は出店者たちが集まり、販売予定の商品の確認や相談会を行った。2020年4月に実施予定だったが、コロナ禍で延期となった。

また高校時代から「GREEN LOOP SENDAI」でお世話になっていた追沼翼さん(建築・環境デザイン学科卒業/大学院修了生)の影響もあります。

芸工大に在学していた時から起業して、街の景色を変えるためにカフェ「day and coffee」(山形市/すずらん街)を作っている先輩の姿が身近にあったので、自分の中に起業に対してのハードルは、正直感じませんでした。

また、「bananaight(バナナイト)」というバナナジュースのポップアップショップの店長として、自分のやりたいことを実行していく中で、事業主となることで信頼を得やすく、イベントに呼んでいただきやすいことに気が付きました。そして思い立たったように開業届を提出し、2020年1月10日に個人事業主となりました。

菅原詩音
「day and coffee」にて、ポップアップショップ「bananaight(バナナイト)」開催時の様子(2019年)。
菅原詩音
学生たちの発表の場を街中につくるため、山形市内の空き店舗を借り、1カ月限定のギャラリー「画廊10」を開催(店主:櫛田海斗さん/建築・環境デザイン学科4年生)。その期間にお菓子の販売を行った。「空と糸」の屋号は、いろんな空の下で、飲食を通して、「人と人」、「人と思い」を糸のようにつなぐ様子をイメージして名付けられた。飲み物を中心に展開するお店などにイベント出店しご飯ものを提供。現在はコロナ禍でイベントが出来ないため、お菓子を郵送で販売している。/撮影(記事トップの写真含む):丸子志織(本学映像学科2年)

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――菅原さんは仲間たちからとても信頼されているように感じます。まとめ役として何をいつも意識されていますか?

この質問を受けて改めて考えたときに、2つあると思いました。

1つ目は「自分もみんなも楽しく」です。これは、リーダーとしてのプレッシャーを感じすぎて、せっかく始めた楽しいことを楽しいと思えなくなってしまった経験からです。

そんな時、他の学科の方が楽しくイベントを統括している姿に衝撃を受けました。参加している人たちは勿論ですが、何より本人がすごく楽しそうだったんです。コトを始めるときは「楽しさ」はとても大事なのだと思いました。

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2つ目は、「みんなでつくる」です。一見リーダー感が薄れる印象ですが、相談や頼まれ事をされるのは自分の存在意義が感じられる嬉しいことなのではないかと思ったんです。

その事に気を付けながら「SHARE marché」の活動を続けたら、スタッフたちが生き生きし始め、最初は10人いればいいなと思っていましたが、最終的には他大学を含め46人も集まっていました。

困ったら頼れる仲間がいて、同じ立場で面白そうなことを一緒に作ってこれたので、この2つの視点はとても自分に合っていると感じています。

菅原詩音
「SHARE marché」準備風景。伊藤風斗さん(建築・環境デザイン学科3年生)を筆頭に行ったマルシェ当日に設置するストリートファニチャー作りの様子。

――実際にマルシェの運営(準備)はうまくいきましたか?

正直めちゃめちゃ悩みがありました。参加者が多くなりすぎたり(笑)保健所への申請や、マルシェ本体を運営する方々とのミーティング、出店者サポートや空間レイアウトなど、5~6のチームで動きましたが、コアメンバーとの意思疎通なども含めて、全部を動かす難しさがありました。

準備をしていた最中にコロナ禍で実現できなくなってかなり落ち込みましたが、その後、それまでの経験を生かして自分たちで企画し動き出している後輩たちの姿があって、とても嬉しくて元気をもらいました。

菅原詩音
マルシェ開催1ヶ月前(2020年3月)のミーティング風景。スタッフ参加を希望する学生たちが増えていた頃。

垣根を超えた
オンラインの「やすみじかん」

――今、取り組んでいることはありますか?

芸工大と東北大、東北学院大の学生がコアメンバーとなって、学生たちによる学生のためのSNSのコミュニティの構想を練っています。

芸工大もこのコロナ禍で前期は全てオンラインでのリモート授業になってしまい、友達との雑談や、先輩たちと出会う機会が減っていると思いました。そこで、1年生に、先輩たちが格好良く活動する姿を見せたり、ゆるゆる雑談できる休み時間のような機会を創出したいと思っています。

菅原詩音
学生たちの個性を持ち寄りつつ、ゆるやかな空間と関わり方を感じさせる「やすみじかん」のロゴ。制作は櫛田海斗さん(建築・環境デザイン学科4年生)。毎回テーマを設定して、何か動き出したい子たちのインプットの場をZoomなどを活用して展開する。

――今年は菅原さんの卒業年度ですね。現在手掛けている卒業研究のテーマは?

私も学生時代に関わったマルシェが10以上!(笑)という経験から、少しずつですがプロジェクトのリーダーとして全体を統括できそうな感覚が出てきたので、「学生のつながり・挑戦のきっかけづくり」を研究テーマに、これまでつながった周りの友人たちの面白さをもっと生かすための研究をしようと思っています。

自分らしく生きていく以上、人を頼ったりつながりながら、何か面白いことを計画していきたいです。

菅原詩音
菅原さんが参加している「YOKOSAWA CAMPUS PROJECT」(紫波町日詰商店街)メンバーとの集合写真。大家さんが横沢さんで、人々が学び続ける場所として存在するという意味から、二つの意味を合わせて「ヨコサワキャンパス」と命名。空き家をカフェ、コワーキングスペースとしてリノベーション。現在、菅原さんが製作したお菓子のオンライン販売などを行っている。

いつかそうなる、と自然に構想する未来

――大きな夢もあるそうですね。

はい。将来は、自分が「ここだ」と思える地域で、家族と一緒にお店を持ちたいと思っています。父と母が居酒屋をやっている影響もあるのかもしれませんが、小さい頃からの夢なので、例えば、小学校の頃に「いつか中学校に入るんだろうな」と思うのと同じように、いつかそうなるという感覚に近いです。

――卒業後のステップとしては?

高校生の時から大好きなお店だった「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」の社員として内定を頂きました。「世の中の体温を上げる」という経営理念や、手間暇をかけている商品と同等に、社員である「人」を大切にしていることを知って大ファンになった企業です。

入社後はまず店舗勤務だと思いますが、「人や世の中に注ぐ体温のような暖かさ」を体感しながら学び、お客様に提供できる人間になりたいです。

菅原詩音
撮影:小野七菜華(本学映像学科4年)

地域の人たちをサポートする様々な力を身に付けることは勿論ですが、マルシェや個人事業主の経験を経て、アイデアを社会実装できる力を持つ人材もコミュニティデザイン学科では輩出し始めています。ともすれば、ものごとをクリエイトするためには強いリーダーシップが必要不可欠と考えがちですが、仲間たちとの素敵な積み重ねから生まれるかたちもあることを菅原さんに教えていただいたインタビューとなりました。

(取材:企画広報課・樋口)

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