文化財保存修復学科Department of Conservation for Cultural Property

柏倉写真資料群の調査
阿部颯太
宮城県出⾝
保存科学ゼミ

本研究の⽬的は柏倉九左衛⾨家写真資料群における⽬録作成と温湿度調査に基づいた調査書の作成及び適切な保存環境の提案である。調査対象の柏倉九左衛⾨家写真資料群は国の重要⽂化財に指定された旧柏倉家住宅(中⼭町)に保管されており、柏倉家の歴史の記録が視覚的に確認できる貴重な資料である。これらの写真資料は、現在屋敷直結の内蔵に保管されているが、その多くに経年劣化による退⾊が確認できるほか、時代が異なるフィルムが混在しているうえにアルバムが横積みで保管されている。写真資料は保存保管環境によっては劣化が急速に進⾏するため、中⻑期の保存保管のためには、環境整備が急務である。

そこで本研究では柏倉九左衛⾨家写真資料群の保存保管環境改善のための調査書を作成した。多重の資料を整理し⽬録を作成すること、そしてそれら資料の適切な取扱と保存のために保   管環境の評価といった保存科学的な視点を取り⼊れて調査書を作成すること、これらの作業を通して柏倉九左衛⾨家写真資料群にとって最善の保存および記録を整備することが本研究の⽬指すところである。調査書は、⺠俗学分野から⺠間資料の整理学を参照し、担当職員の助⾔をもとに新たに作成した。すべての資料に番号を付し、調査書記載項⽬は、資料番号や年⽉⽇、資料表題、内容、撮影地、作成者、⼨法、付随資料、劣化状況などとした。また、柏倉九左衛⾨家16 代当主への聞き取り調査もおこない、⼈物に関する情報などを追記した。将来的な保存活⽤につなげるため、段階的な整備策として、保存箱内での配置や写真とネガフィルムの分別、保存環境の経過観察などを提案した。

1 柏倉家写真資料群箱 A

2 横積みされたアルバム

3 展⽰する B-004 画像