山形県天童市田麦野地区の地域文化財の保存・継承 〜カードゲームの制作と実践活動を通じて〜
西田萌々香
新潟県出身
立体作品修復ゼミ
山形県天童市田麦野地区には社や祠といった歴史や文化を示す地域文化財が文献調査から46箇所点在していることがわかっている。現在これらの地域文化財は住民や自治体により管理されているが、管理が行き届いていない場所もあり、地元住民であっても存在を知らない人がいることが確認でき、今後人々の記憶から消失する可能性が懸念される。そこで本研究では、地区内外の人に地域文化財について認知・理解してもらうきっかけとなるツールを制作し、保存・継承の一助とすることを目的とし、今後の文化財活用の啓蒙活動の一例として提示する。なお本研究では地区内に点在する31箇所の社や祠を任意に選択し研究対象とする。
地域文化財について認知・理解してもらうツールとして、地域文化財とカードゲームの組み合わせを提案し、方法や効果についての考察を研究方法とする。カードゲームは「田麦野地区の地域文化財」について楽しみながら知ってもらうことを目標とし、幅広い年齢層で遊ぶことを設定する。試作したカード(図1)を用いて、本来は田麦野地区内外の人を対象にデモンストレーションを開催する予定だったが、COVID-19の状況から文化財保存修復学科の教員と学生を対象に開催した。デモンストレーションではカードゲームの体験に加え、参加者にミニテストとアンケート協力をお願いした。その結果、カードゲームをすることで社や祠あるいは神仏について知識の定着を促す可能性がある結果が出た。参加者は田麦野地区や地区内の地域文化財について知らない人が大多数であったが、カードゲームを通して地域文化財等について認知してもらえる傾向が見られたことから、地域文化財を知ってもらうツールとしてカードゲームは有効であると言える。さらに今回地域文化財をカード化したことで、それらの存在や現状を記録することができ、いつでも確認ができるものになった。
本研究では社や祠といった地域文化財やそこに祀られている神仏をカードゲームという形で記録化したことで地域文化財の保存・継承の一助としての一手段として効果的な取り組みを提示できたと考える(図2・3)。