歴史遺産学科Department of Historic Heritage

関西人としての意識と東北 -オートエスノグラフィー序説-
小國直輝
兵庫県出身
田口洋美ゼミ

本研究は、大学入学を機に東北地方(山形)で暮らすことになった兵庫県出身の“関西人”・“関西出身者”である私の自己そして他者認識の形成、人生観、それらの変遷についてのオートエスノグラフィーである。“関西=大阪”、“関西人=大阪出身者”、“関西弁=大阪弁”と言ったイメージがあり、そのユニークさはマスメディアによって画一的に発信され多くの人口に浸透、膾炙している。先行研究を踏まえ私が自身を“関西人である”と意識したのは間違いなく山形に来て暮らすようになってからである。また、他者からのステレオタイプ的なまなざしを偶然でも一度受けてからは、それを次第に内面化、意識のうちで自身に定着化させ、振る舞い過ごすようになった。私自身の中にある問題の所在。それを明らかにしていくことで私自身のなかにある“何か”の正体を見つけたい。

 また、私自身が関西をどう捉えていたか、“関西人になった”ことで私にもたされたもの、起こった変化、自己の形成とは。それらについてオートエスノグラフィーのかたちで記述考察をしていくことで自身の救済にまで至った。

オートエスノグラフィーとは、調査者自身が自身を調査・研究の対象とし、主体的主観的な経験を表現しながらそれを自己再帰的に考察・省察する手法である。日本語でわかりやすく言うならば自己エスノグラフィーと呼べる。自己へのエスノグラフィー。つまり自己へ対しての参与観察ということである。このエスノグラフィーに関する客観性の問題は、問題にならないほど客観性が無い調査方法である。しかし、世の中には実際に体験・経験した人にしか書けないことがあるということもまた事実である。こういった手法を取るうえで注意しておきたいのが単なる主観的なナルシスティックな自分語りに収束することである。そこに終始せず、そこから再帰的に自己に向き合うことが必要とされる。私自身の経験、そこにあった感情の揺れを、自己そのものを対象とし記述考察を行う。