美術科 テキスタイルコースDepartment of Fine Arts Textile

[優秀賞]
小野寺雪乃|燦々、傘
岩手県出身
安達大悟ゼミ
H1500×W4000×D3000mm ポリエステル、化学染料

絞り加工を施したテキスタイルを日傘に活用し、奇抜な形と鮮やかな色合いで、エネルギッシュでハツラツとした可愛らしさを詰め込んだ。このテキスタイルの特徴<立体感・伸縮性>を、開閉時に形が変化する傘の構造と掛け合わせ、使う度に立体感と模様が変化する傘を制作した。刺激的なテキスタイルの魅力を暮らしの身近な場面でも感じられるよう、個性的な見た目のおもしろさだけではなく、実用性も兼ね備えた作品を目指した。


安達大悟 専任講師 評
テキスタイルと暮らしを魅力的につなげることは、一筋縄ではいかない。テキスタイルで「できること」に特化していけば見た目の面白さに終始する。つまり、絵画的な追求や立体造形的な追求になる。また、暮らしを意識し「馴染む」ことに特化していけば、耐久性や機能面もさることながら、その色彩も適するとされる限定的な選択となる。ある意味、楽しさから遠ざかる感覚がある。この2つをどのようなバランスで融合させるかがクリエイターとして腕の見せ所になる。
小野寺はテキスタイルによって演出できる華やかさと立体感に注目し、「こんな生活があってもいいじゃない」と、刺激的で思い切りの良い傘へと仕上げた。東北の地で生まれ育った彼女が、なぜか南国の陽気さに魅了されデザインに取り入れたポップな色彩と、開閉時に魅せるプリーツの変化は、手に取った人の遊び心をくすぐる。
使い勝手だけに注目すれば、ここに辿り着くことはなかっただろうし、若き才能、若き感性があって成立したのだろう。
思い通りにいかない昨今において、この傘が少しでも多くの人に笑顔を与えてくれれば・・・そんな期待を抱かずにはいられない。