建築・環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

小学校の低炭素化へ向けた研究 仙台市立幸町南小学校の事例
加藤裕也
宮城県出身
三浦秀一ゼミ

 現在、国による全学校のエアコン設置により、子どもたちの学習環境が改善されたものの、各小学校の消費エネルギー量の増大という新たな問題が浮上した。仙台市は幸町南小学校を実験対象として、教室に断熱、換気システムを導入し、室温・湿度・室内二酸化炭素濃度・消費エネルギーの面から実測調査を行い、この問題の解決を図っている。私はそれらのデータ分析を行い、改修によってどのような効果が得られているのか考察した。また、断熱や換気システムの導入だけでなく、太陽光パネルの設置といった冷暖房の省エネ以外の面から低炭素化について対策案の考察を行った。
 始めに断熱・熱交換換気の導入効果についての調査を行う。消費電力において、教室内に熱交換換気を導入している教室がエアコンの消費電力削減に効果があることが分かった。小学校教室は住宅と比べ、面積当たりの人数が多く、換気が頻回に行われるため、冷暖房エアコンによって調整された教室内の空気を窓やドアによる換気で損失していることが明らかとなった。そのため、熱交換換気を導入している教室ではその換気による損失が抑えられたことから他教室に比べ、冷暖房エアコンによる消費電力が少ない。このことから断熱よりも熱交換換気を導入することが冷暖房エアコンの消費電力削減に効果的であると分かった。既存教室と熱交換換気を導入した教室を比較するとエアコンによる消費電力が37%、学校全体に導入した場合8%の削減効果が出る結果となった。
 次に太陽光パネルの導入についての調査を行う。現在、幸町南小学校では屋上の一部に太陽光パネルが設置されているが、災害時といった緊急時以外の利用がない状態である。屋上に太陽光パネルを設置した場合の効果を計算すると、学校全体の年間消費電力68%に相当する77,400kWhの発電が見込めることが分かる。
 これらすべての消費電力削減効果をまとめると断熱・熱交換換気の導入で8%、太陽光パネルの導入で68%、合計で76%小学校内全体の消費電力を削減できる結果となった。このことから太陽光パネルの導入によるエネルギーの自給と、断熱・熱交換換気の導入を合わせて行うことで小学校の消費電力は現状の24%まで削減が可能であり、太陽光パネルの導入面積の拡大を行うことで小学校をはじめとした公共建築の100%再生可能エネルギーによる自給自足が可能となるだろう。