建築・環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

[優秀賞]
ローカルプレイヤー主導による既成市街地再生に関する研究 −3つの地方都市における手法と構造の比較−
北嶋孝祐
秋田県出身
馬場正尊ゼミ

 日本はこれまで、街並みや都市景観の維持、地域における消費空間である市街地の活性化において、行政が大きな役割を果たしてきた。しかし、急激な人口減少や財政縮小により、脱成長時代を迎えた現在、行政を中心とした既成市街地の再生を行うことは困難な状況となりつつある。
 特に地方都市では都市基盤が一定の規模で整備されていながら、建物の老朽化や人口減少、高齢化などの問題が複合的に生じている。そのため、行政からのトップダウンによる従来型の大規模再開発はもはや採算性が取れず、既成市街地の空洞化が進行している。
 このように空洞化した市街地に、リノベーションをエリア展開することで、波及的に市街地の再生を進める動きがある。地域資本による民間事業者「ローカルプレイヤー」たちが独自採算で市街地再生を進めている点で、従来のまちづくりや大規模な再開発とは異なる市街地再生の動きである。
 本研究で取り上げる事例の一連の取り組みは、地方都市においてローカルプレイヤーが主体となって行われたエリアリノベーションの先駆的な事例である(図1,2,3)。これらの取り組みは、営利事業の展開によってエリアの再生を進めており、近年ハード面・ソフト面の両面で疲弊した市街地の再生における新たな手法となる可能性がある。
 そこで、本研究ではローカルプレイヤーによる地方都市の既成市街地再生の取り組みの過程を、人・空間・経済・社会という実地的、実践的な視点から調査、比較し、エリアの漸進的変化の構造を分析した。また、開発需要の低下した市街地において、ローカルプレイヤーがエリア再生に貢献する新たな主体としてどのような役割を果たすか明らかにした。
 山形駅前のコーヒースタンドDay & Coffeeなど、実際に事業に取り組むプレイヤーならではの視点で、これからのローカルプレイヤーのための、新たな現象、方法論を模索した研究である。この研究が、次なるローカルプレイヤーたちの活動に資するものとなることを願う。


馬場正尊 教授 評
北嶋くんは、大学を一時休学し、その間に仲間と「Day&Coffee」というカフェを、山形の中心市街地、すずらん街にオープンさせた。学生ながらその共同経営者でもある。その場所を作るプロセス、それをきっかけに体験した街での気づきや出来事がベースにある論文である。
自らをローカルプレイヤーと称し、その存在、そして関わる場所が街にどのように作用し、変化を起こすのか、それを客観的に分析している。エリアリノベーションの方法論を、主体と客体を往復しながら深めていく構成となっている。複数の都市を調査し、その仮説を自分で実験しながら再認識、そしてカスタマイズしながら適用させるプロセスがこの論文のオリジナリティーであり、魅力でもある。
小さなコーヒースタンドから、彼らは街をどのように変えていくのか、楽しみだ。

図1 秋田市亀の町エリアリノベーション

図2 山形市シネマ通りエリアリノベーション

図3 韮崎市中央商店街エリアリノベーション