建築・環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

[優秀賞]
熊谷遥奈|十年の皮膜 百年の構造
宮城県出身
竹内昌義ゼミ

私達人間は産業革命以来、建築材料として鉄やコンクリート、ガラスなどの化学物質を作り出し、生活を進展させてきた。しかしこれらは生産時に二酸化炭素を排出するため、地球温暖化を加速させている。その一方で、今まで建築材料として使われてきた木や石、土などの自然素材の利用が廃れていった。本研究では一つの建物を通して自然素材を新しい形で使用する方法を提示する。


竹内昌義 教授 評
この作品は、現在ある地方の大都市で、その構造体を残しながら、それを覆う外皮が時間によってうつろいゆくことを示している作品である。外皮は土や木、石などで作られ、それは近代建築が失ってきた伝統的な材料である。これらは永遠に同じ表情にはならず朽ちていき、新しく更新される。一方、構造は現代にあるものをそのまま残し、使い続ける。ある時のある姿ではなく、時間に沿って建物が変化していく様が展開される。時間軸に則ったデザイン、時間自体をデザインしているとでも言おうか。これらは経過や姿を表した膨大な数のスケッチと模型で表現される。建物の輪廻転生と言えるような変化が見られる。現代の建築が纏う軽くて変化しない外皮によるデザインを嘲笑しているようだ。近代建築の批判でありながら、伝統に回帰して行くわけでもない。今あるものに、新しい状況を、素直にオーバーレイさせていくとでも言えよう。諦めているわけでもない。変に期待することもしない。また、ロジックな組み立ての上に成り立っているようにも見えるが、ひょっとすると本人はリアルにあっけらかんとこういう未来を見ているのかもしれない。