大学院Graduate School

[優秀賞]
富永和輝(芸術文化専攻 芸術総合)|環風景
兵庫県出身
三瀬夏之介ゼミ
2950×8100×30mm 綿布・炭酸カルシウム・銀箔・岩絵具・胡粉

私は「事後における継承表現の探究」として、東日本大震災をその後の世代へ伝えるための表象手段に注目し制作を行なってきました。
災害が起きたその後では、時間と共に見えなくなるものがたくさんあります。経験していない、わかり得ない、怖いという思いの断絶は、一層過去のこととして遠ざけてしまうような気がします。
現実に起こったことを愚直に示すのではなく、誰もが向き合えるカタチを目標に絵画制作を行なってきました。


酒井 聡 デザイン工学専攻長 評
あると信じていた失ってしまった手足などの身体の一部。それらを想像し痛みを感ずることを「幻肢痛」と言う。そんな悲しみをまとった言葉をタイトルとして、果たして作品を作り続けられるのだろうかと心配した。ましてや作品のモチーフは東日本大震災である。途方も無いほど多くの人たちの感情を内包としたその出来事ですら、人々は気づかず忘れてしまう。忘れないと言葉にすれば簡単なのかもしれないが、どこか他人事のようでもある。
そんな出来事を誰もが当事者として思わずにいられない作品群である。静かな作品の中に人々の思いのざわめきを感じるその活動と制作は本学大学院生ならではのものであり、富永くんでしかなし得ないもので評価に値する。