[優秀賞]
坂本愛佳|よあけのき
青森県出身
鴻崎正武ゼミ
1620×3909×350mm パネル、和紙、水彩色鉛筆、水彩絵の具
自分自身を象徴した世界樹を描いた。その周りは海水に満たされてはいるが成長を繰り返すうちに地上(画面下の折り重なる腕)へ浮上することができた。さらに成長を続け葉や果実を繁らせようと幹に向かって栄養を求めている。世界樹や地上を人間に置き換えることで、人々との関わり合いの中で私が存在していることを表したのである。変化に怯えながらも水の上へ上がることのできた自分自身を信じ、大切にしていきたい。
鴻崎 正武 准教授 評
彼女は小売業社に就職が決まった。ファッション好きで東京のアパレル企業も考えたが、経済的に安定して大切な家族を支えながら、地に足をつけて作品制作も継続していきたいという。それは人間として勇気のある素晴らしい決断だ。
油絵具に馴染めずにいた彼女は学部3年次、高校で服飾を専攻したときに使っていた水彩色鉛筆、和紙の魅力に気づいた。この絵画は自分自身を大樹に見立て、大事にしてきた品々を散りばめながら、様々な人たちと関わってきた記憶から、これからも上昇し成長していく願いを込めている。
心理学者ユング曰く、世界を体現する巨木「世界樹」は人類の思考の中に備わっている集合的無意識であり、コンプレックスを越えた先の理想概念だという。これはまるで彼女の社会に対する一貫した強い意志、完璧な美を追求する姿勢を現している。この絵画から、混乱する世界の行先を正しく指し示してくれる、そんな内包する愛情を感じるのだ。