文芸学科Department of Literary Arts

刺繍とビーズの小さな物語
髙橋芽以
山形県出身 
野上勇人ゼミ

 量産品とは違う、手作業による凝った作りの特別なアクセサリーを持つことは女性の憧れである。しかし、そういったものは複雑で細かな細工が施してあったり、長い時間を使って作られたりすることから値が張った作品が多く、簡単には手を出せないだろう。自分だけのアクセサリーを入手するための手段には、買うこと以外に自分で手作りをする「ハンドメイド」という方法がある。このハンドメイドは手軽に始めることができる手段のひとつだが、作る作品の種類によっては高価な道具や材料が必要になる。そこで、できるだけ簡単に入手できる材料や道具を使ってハンドメイドアクセサリーを作る時の入門編になるような本を作ることは出来ないかと考え、一冊の本としてまとめた。
 この製作物のコンセプトは、「特別なパーツを使わないで手軽に作ることができるアクセサリー」と、「手芸アクセサリー入門編、誰でも簡単に作ることができる」という点だ。これらの点に沿って制作を進めていく中で特に難しかったことは、作品作りと撮影だった。作品はできるだけ複雑ではない形で、尚且つ纏まりがありつつもそのモチーフの特徴を捉える必要がある。そのため、それらの条件に合う作品のモチーフ探しや配色に悩み、作品を作ったものの納得がいかずに掲載しなかった図案もいくつかある。作品や道具などの撮影では、光の当たり具合、配置、角度など、どうやったら見栄えが良く映えるかという点に悩み、何度も撮り直しや加工を変えるなど編集作業中に修正した部分が多く苦労した。しかし、この作業に時間を掛けたことが、最終的に自分の納得のいくものを作るための基礎になったため、途中で妥協して諦めたり、大雑把な作業を続けてしまったりせずに、地道な努力を続けることがより良いものを作るためには大切なのだと改めて考えさせられた。
 作ったものを身につける時にふと、材料を揃えた時のこと、作っている時に失敗、完成した時の達成感や嬉しさを感じる。これら全てはその作品にしかない大切な思い出であり、アクセサリーにとっての小さな物語である。この自分で作るからこそ感じる物を作る楽しさや達成感を、この本をきっかけに知って貰えたら嬉しく思う。