成人期の通過儀礼について―山形県東根市の事例を中心に―
武田大河
山形県出身
田口洋美 ゼミ
私が本研究で扱うテーマは「人生儀礼」あるいは「通過儀礼」と呼ばれるものである。現代、成人式に参加するのは満20歳を迎えた人々が主であり、その人々は、その儀礼を経て「子供」から「大人」として扱われるようになったという事が言えるだろう。私は、通過儀礼をテーマとした本研究において、特に成人期の人々に与えられる通過儀礼について調査した(図1)。調査対象は山形県東根市の事例である。
過去と現代の成年期の通過儀礼を比較し現代「一人前」の資質はどのように問われるものであるのかを明確に言語化して結論とする事を目的とする。
東根市民話会の方々への聞き書きと文献調査を行った。文献調査では芳賀登の著書『成人式と通過儀礼―その民俗と歴史―』(1991)の成人期の通過儀礼に関する考察を参考とし、そのほか、若者組などの古くからある日本の様々な通過儀礼の事例を収集した。聞き書きでは東根市にあった小田島地区の「御所山参り」や「ケイヤク」などの事例に関する事例の収集を行った。これらの事例の過去と現状を考察し、現代の通過儀礼における「一人前」とはどのようなものであるのかという事を見出していく。
東根市の民話会の会長を務める滝口国也氏との聞き書きを通して、東根市小田島地区の「三山参り」と「御所山参り」という通過儀礼について調査をした。また、滝口氏の著書『御所山探訪七十年』(2018)(図2)を参考にしている。村山地方では、男子が15歳になる頃、出羽三山(月山・湯殿山・羽黒山)に参拝する「三山参り」をした後、納め参りとして東郷地区の御所山に参拝する「御所山参り」を習わしとしていた。「村山地方一円では男の子が生まれると、丈夫で賢く、素直に育つようにと、山の神様に願を掛けた。そして、「15歳になったらお礼参りに上がらせます。」と神に誓った。したがって15歳になると、山の神に御礼参りという一面もあったと言う。」(滝口,2018:34)「三山参り」「御所山参り」は元服20同様なものと言われていた程に、この地域での一大通過儀礼なのであった。