歴史遺産学科Department of Historic Heritage

若者から見たオタク像
吉岡美衣亜
長野県出身
謝黎 ゼミ

目 次  オタクとは何か/オタクはオタクをどう見ているか―インタビュー調査から/オタクの現在と未来

 「オタク」というと一般的にアニメや漫画などに没頭している人物を指すことが多い。またこのようなジャンルに没頭する人物を「アキバ系オタク」と呼ぶ。「おたく」という言葉は2000年以降、『電車男』の大ヒット(2004〜2005年)やいわゆる「萌え」ブームなどを通じて急速に一般化し、現在では日本のサブカルチャーを代表するキーワードの1つとして認知されるまでになっている。本研究では、文献やアンケートだけではわからないリアルなオタクの声を聞くことにより、今後のオタク研究の発展に貢献を目指すことが目的である。
 「オタク」という言葉の語源は、1983年6月に中森明夫が、『漫画ブリッコ』で内の記事で「おたく」という語を用いたのが始まりである。この頃はまだ「オタク」という語は一般的に定着していなかったが、1989年の宮崎勤による幼女連続殺人事件以降「オタク」という語は世に広まることとなる。この事件以来オタクは軽蔑の対象とされ、マイナスイメージを持たれてきた。一方で、オタクを再評価しようとする動きも2000年代に入り見られるようになった。日本のアニメや漫画文化が海外で高く評価されるようになり、日本国内の世論にアニメやコミック文化を再評価する機運をもたらすきっかけとなった。
 「オタク」という言葉からネガティブなイメージは薄れつつあり、ポジティブな印象が持たれている。今や「オタク」は「マニア」にかわり若者を中心に幅広く使われる言葉となっている。国内だけではなく海外でも日本のオタク文化に興味を示す人が増加している。アニメに登場する土地や建物を巡る「聖地巡礼」を目的とするコンテンツツーリズムは海外観光客からの人気も高い。
 漫画やアニメといったコンテンツはもはやサブカルチャーではない。しかし、未だにこのようなコンテンツを嗜好するオタクに対して拒絶の姿勢を見せる人々も少なくなく、オタクたちは自衛のために自らの趣味を隠していた。だが、オタクを自称する人の割合は以前に比べ増加しているだろう。インターネットを駆使し様々な人とコミュニケーションをとれるようになった現代では、現実でのコミュニティのほかにネット上でのコミュニティを持つことが多い。そのようなコミュニティを見つけるために自分を「オタク」と自称することは一般的かつ効率的な方法なのだ。