建築・環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

災害時における高齢者の情報収集に関する研究 ~旧河北町避難状況に基づいて~
生田目優有
宮城県出身
山畑信博ゼミ

 東日本大震災(3.11)の震災を初めとして、災害が起きた際に、特に高齢者が情報収集することは難しい。テレビやラジオ、携帯電話を用いて情報を入手してもまだ災害が起こっていないため安心だと思ってしまうため、人々の避難意識に対応した方策を検討する必要がある。本研究は、緊急時に適切な行動を取り、また災害が起きる前から避難する意識を持つ手法を見出してゆくことを目的とする。
 旧河北町は、宮城県北東部の町で2005年4月1日に石巻市と合併した。旧北上川の河口付近に位置しており、人口はおよそ1万人で世帯数は約4000戸の小さな町である。
 石巻市旧河北町の高齢者を中心に避難に関する状況や防災意識などのアンケート調査とヒアリングを行い、連絡手段、情報取得、避難状況、避難訓練参加の有無などの項目もとに回答を得て、そこから結果をもとに提案した。石巻市議会議員に提案した所、地域のリーダーを作ることが大切であり、さらに周りの人たちとの協力が重要との意見を得た。石巻市役所に提案した所、市ではハザードマップを作って、各家庭に配布している。平成23年度に発生した津波では、石巻市旧河北町は浸水していないで(図1)、2階以上に避難することも広報している。洪水の時に自宅にいたら危ない家ではこの限りではないが、「災害において避難するのが最適だと思うが、避難よりも家にいる方が安心だ」という提案に対して、不都合はないとの回答を得た。消防団班長に提案した所、民生委員による高齢者の情報を知る方法が現在はなく、繋がりも無いため誰が困っているといった現状の把握ができていないので、緊急時に待機はしているが情報がないため瞬時に動くことが出来ていないのである(図2)。身体が不自由になって思うように動けない高齢者が増加し、避難訓練に参加しない率が増えていることがわかった。
 消防団や防災士、自主防災組織を地域のリーダーとして、緊急時にこのような人たちに呼びかけするしくみが重要である。地域の高齢者たちを地域のリーダーの人たちがまとめたり、協力して助け合うことで緊急時に避難できたりと即行動できる。(家屋の安全性の確保のために、耐震補強にかかる補助金制度を利用する。)避難所へ避難せず、浸水域ではない地区の住民は、自宅の2階や3階への垂直避難も有効な方策である(図3)。

図1. 避難マップ・平成23年度浸水状況

図2. 情報共有における石巻市成田地区の現状

図3. 地域のリーダーを生かした避難組織