建築・環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

幸福感をもたらす要因の分析とまちづくりに対する含意
海谷花菜子
山形県出身
吉田朗ゼミ

 私たちの幸福感には、所得などの経済的側面、衣食住に関する物質的側面、健康や人間関係、生きがいといった精神的側面など実に様々な要因が関わっている。この中で都市や地域の特性はどのように影響しているのであろうか。さらにその中にはまちづくりによって生み出すことができる要因はあるのだろうか。もしあるとすれば、それがまちづくりの真の目的になるのではないだろうか。このような問題意識の下、本研究では、幸福度に影響を与える要因を探りながら実態を検証していくこととした。日常生活の基盤であるまちや住まいの中で幸福感を左右する要因を見出すことを研究の目的とする。
 幸福度の指標として、ブランド総合研究所の実施した都道府県幸福度ランキングのデータを用いる。まず、幸福度と都市や地域の魅力度の関係を分析するために、同研究所が実施した地域ブランド調査2019における市町村の魅力度結果を対比する。つぎに、幸福度の要因を推定するため、都道府県の様々な特性データを調べる。この多くの要因の中から、重回帰分析によって統計的に有意な要因を特定する。さらに、都道府県ごとの分析で得られた要因を人々の実生活の中で検証し、まちづくりの手がかりを探ることとした。このため、山形市内在住の大学生を対象に住まいの選好調査を実施した。
 調査と分析の結果、観光地などの魅力はそこに暮らす市民の幸福度とはあまり関係がないことがわかり、幸福度の要因の分析結果(図1)として平均寿命(+)、家賃(-)、持ち家率(+)、病院数(+)、自家用車保有率(-)、婚姻率(+)、日照時間(+)にそれぞれが影響を与えることが確認された。これを踏まえた山形市内在住の学生に対する住まいの選好意識調査の分析結果(図2)からは、まちづくりに配慮すべきこととして、家賃を低く抑えるための①リノベーションの促進や②ゾーニング制度の適用、バスの利便性を高めるための③「くるりん」のようなコミュニテイバスの導入や④バスの利便性が高い都心で家賃を抑えるための家賃補助制度、⑤日照時間に配慮した住宅の配置が重要であると言える。

図1.要因の重回帰分析の結果

図2. 選考意識調査の順序ロジスティック回帰分析の結果