建築・環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

表現の場づくりと地域への影響~表現者と街の共存を図る社会実験~
櫛田海斗
宮城県出身
馬場正尊ゼミ

東北芸術工科大学は山形市に位置する美術大学であり、デザインの分野と芸術の分野で幅広くものづくりを学ぶことが可能である。ものを作る人数が多ければ、作られるものも多い。展示や発表の場を求めている人も少なくないと考えた。芸工大内には展示スペースが幾つかあるが、展示や発表の場として足りているのかが疑問に思った。また、芸工大内での展示では来場者が学生中心となるので、街の人々にも見てもらう必要もあるのではないだろうか。街の中にギャラリーをつくることで、展示場所の確保と街の方々への発表の機会を作ることができると考えた。
実際に山形市十日町の物件を借り、期間限定のギャラリーをオープンさせた (図1、図2)。実験対象の十日町は大きく開いた表通りが商店の並ぶ商人の町、細い道の裏通りは商人の町としての歴史がある。古くからの技術の残るこの街で技術や美術の術を発信することに意味があると感じた。限られた場所の中で展示をするのではなく、展示場所と展示の機会を自分たちの手で作る。街に開いたギャラリーを街に蔓延させ、街の方々との交流も計り、街と街の方々と距離が近い、一時的なアートの街を作り上げる。十日町の物件2軒を使い、2020年2月から9月までの間で17名のアーティストの展示を行った。来場者にギャラリーの存在をアピールするために、期間ごとに数名のアーティストに滞在してもらった(図3)。ギャラリ―へは街の方々が足を運び、展示物を眺めて行く光景が実現し、中にはリピーターとなる方や自分の作品を展示してほしいとの相談もあった。また、来場した方の中には自分でもギャラリーやアトリエを持ちたいと話す方も多く、その後別の店舗を借りて展示を行っていた。
学外展示が活発に行えるようになったり、卒業生含む山形のアーティストの発信の機会が増えることで、場所を持ちたいと思える人が増えるのではないだろうか。
空きテナントを利用することで物件としての価値も上がり、アーティストが住みつくようになれば街に活気が戻りかつて発展してきた街の姿が蘇る。空きテナントを「厄介なもの」ではなく「余白のあるもの」と捉える。止められない間題を嘆いでるのではなく、現在できることで活動を続けていくことが重要だと感じた。この活動から緩やかにまちへ出ていくアーティストが増えていくことを願っている。

図1.実際に借りた空きテナント

図2. 行った展示の様子

図3. 活動をイラストにまとめたもの