建築・環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

自給的農家の実態調査
國井由樹乃
山形県出身
三浦秀一 ゼミ

 本研究では白鷹町蚕桑地区を対象地域として調査を進めた。蚕桑地区には販売目的の農業だけではなく、自家用の野菜を育てている方や山菜やきのこを採取している方がたくさんいた。他にも、作物を育て収穫してウサギや鶏など自ら動物を育て食べている方や大規模な無農薬栽培を行う方、自ら飼料を栽培する牛飼いの方など、様々な形の自給自足する方に出会った。
 蚕桑地区の自給自足な暮らしとは何か実態を明らかにし、自給自足によっておこる循環や知恵、特徴を導き出すことを目的とする。
 個人調査のなかでも、蚕桑地区で山菜名人と呼ばれる田勢さんの山菜収穫に何度か同行させてもらった。田勢さんは毎年60日間も販売目的でもなくお裾分けして喜んでもらうために採取しにいき、天然わらびにおいては毎年約1トンも採取している(図1)。他にも蚕桑地区の100人の方を対象にアンケート調査を行ったが、スーパー等での野菜の購入頻度についての質問では、9割近くの家庭が半分以上の野菜を自家用野菜で賄っているという結果が出た(図2)。また、蚕桑地区の方々は自給的な生活を取り入れながら、野菜の栽培方法などを8割の人が近所の人や専門家などと話してみたいと思っていることや漬物、味噌作りの講習会に半数の人が参加してみたいと思っていることがわかった。
 このように蚕桑地区には様々な名人や達人が存在していることやアンケート結果より蚕桑地区内での交流を求めているということがわかった。そこで、コミュニティセンターを中心に活動する交流会感覚のツアーとした、野菜の栽培方法の講習会や漬物・味噌の作り方の講習会の開講を考え、蚕桑地区の方に提案した。蚕桑地区内での交流から始め、地区内でも生活スタイルの情報交換を行い、次の世代へ継承をしていく機会を作る。
 また、そのような蚕桑地区の活動や自給的な暮らしの生活スタイルをWebサイトを利用して発信していく(図3)。このWebサイトは外部の目にも入る事から、外部の人が蚕桑地区に興味を持ってもらう機会となり、実際に自宅の畑で自給的な要素を取り入れる後押しになることや、実際に蚕桑地区に訪れてもらうきっかけになればと考え、このように自給的な生活の継承に向けた新たな活動により、活気あふれる蚕桑地区を維持していく。

図1. 山菜名人の田勢さん

図2. 野菜の自給率

図3. 公開予定のwebサイトトップページ