建築・環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

都市計画の視点から見る環境配慮型建築の社会的・経済的効果 -建築環境性能評価制度間の項目比較と日本における認証の効果-
新関千広
吉田朗ゼミ

 この研究は、二つのことを目的とする。一つは、米・英・日を由来とする建築性能評価システムLEED、BREEAM、CASBEE、ZEB、の評価項目を比較することにより、日本における環境配慮型建築とそれらを取り巻く都市環境を評価する目的を明らかにすることだ。比較は4つの評価制度の項目をLEEDの項目に照らし合わせることで行い、制度ごとの共通点と違いを明らかにすることで、各システムの特色と環境配慮型建築の体系を掴む。認証制度の対象を揃えるため、LEEDはLEEDv4BDC新築、BREEAMはNew Construction2018、CASBEEは新築2016年版の比較を行う。二つ目は、日本国内でLEED認証を受けた建築物の統計データをまとめてグラフ化すると共に(図1)、認証の有無が経済的効果に差を生じさせるのかを検証する。方法として、物件分析はへドニックアプローチによって行った。
 研究の結果、認証制度間の比較では、LEEDとCASBEEの立地選定評価項目においてLEEDが建築と都市の位置関係を数値によって定義していることから、都市の広がりを防ぐといった目的にあたる都市計画の観点を持っていることがわかった。また、評価項目の中でも条件が細かく分かれていた「エネルギーと大気」、「材料資源」に関してはLEEDが求める性能項目と各種性能項目に大きな差はなかった。しかし、CASBEEがもつ特徴として、地震への耐久性といった地理的特性による日本特有の項目がある点と「立地と交通手段」に関しては項目が共通しているものの、詳細内容では求める基準において具体的数値の有無という点で違いがあった。また、ZEBはエネルギー消費量に特化しており他の認証制度と異なる指標である。次に、LEED認証の経済的効果の分析結果については、日本のLEED認証を得た物件の集計情報から、賃料を東京駅までの鉄道移動にかかる所要時間で回帰した結果相関が見られた。加えて、LEEDプラチナ評価の有無(ダミー変数)と築年数、指定容積率、都市計画用途地域を説明変数に加えて分析を行った結果、LEED認証のプラチナ評価が賃料上昇にプラスの効果をもたらすと言える結果になった(図2)。

図1. LEED認証データのグラフ化

図2. 認証と賃料の分析