建築・環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

ゲームグラフィックにおける建築物のデザインについての研究~ゲームから見る未来の建築~
前田大和
山形県出身
山畑信博ゼミ

 本研究は現実の建築・空間をゲームに落とし込むプロセスから、ゲームの建築、空間の今後や、近い将来、現実の建築や環境、空間にどのような影響を与えるのか、ゲーム内の建築と、そのモチーフとなった建築を比較しながら考察していく。
 図1 は、歴代のドラゴンクエストシリーズ(以下DQ と表記)におけるフィールドマップで使用されている村、町、城のグラフィックを特に変化が著しい部分に絞り、抽出したものである。グラフィックの変化が特に著しいのは、2004 年に発売されたPS2 版DQⅤとDQⅧである。ゲーム内の建築への影響として、図1 のように2001 年が2D の簡易的な表現だったものに対して、2004 年には村、町、城など建築のバリエーションも増え、デザインもよりリアリティのある現実の建築に近づいた。そして2017 年にPS4 で発売されたDQⅪではUE4(アンリアルエンジン4)を採用し、ハイエンドなグラフィックによる映画のようにリアルな描写が描かれるようになった。図2 はDQⅪに登場する建築物と、実際の建築を比較したものである。DQ の世界観が中世~近世だと考えられることから、世界観準拠の建築が多く見られ、特に中世ヨーロッパの建築をモチーフにする傾向が見られた。また、DQⅪに登場する建築は、ベルサイユ宮殿のようなシンメトリーの建築が多く見られる。これは均整のとれたデザインの美しさを演出するだけでなく、国の権威や政治思想さえも感じ取れる様に、実際の建築が持つ特徴をゲーム内の建築に落とし込むことで、シンプルでありながら、プレイヤーに力強さを感じさせるデザインが成立していると考察する。
 図3 は和風テイストの里の様子を実際の建築と比較したものである。ゲーム内の建築にも実際の建築と同じように神社の棟の上に横に並べた木である「鰹(勝男)木」や交叉した材を大棟の上に置く「置(おき)千木」、兜のような屋根など「伝統的な建築を取り入れたデザイン」が組み込まれていることがわかる。
 結論として、ゲーム内で作られる建築は1 つの建築に幾つもの建築様式が混在しており、どの建築も複合され作られていた。そして、複合されて作られている建築や空間にはそれぞれ「伝統的な建築を取り入れたデザイン」「素材に着目したデザイン」「非現実的な要素を取り入れたデザイン」で構築されている。これらのデザインがプレイヤーの心情を大きく動かす要素として役割を果たしているのである。

図1 「DQ シリーズフィールドマップ年表」

図2 「DQ モチーフ比較表」

図3 「ホムラの里」比較図