DEPARTMENT OF PRODUCT DESIGN|生産デザイン学科

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生産デザイン学科

学生×教授対談 木口友美(4年)×降旗英史 教授

木口
卒業制作の作品は成形合板[※]の椅子で「複合家具」を作ります。テーマは「輪郭」。
降旗
彼女が今回制作する「複合家具」は、ちょっと見ると椅子のようでもあり、そうでもないように見えるオブジェに近いものです。側面に回って見ると、椅子の輪郭の形や照明スタンドの形が組み合わさって見えます。生産の卒制の傾向を一言で言うとアート的。常識的な視点をちょっと捻って、それをばねにして発想する。今ではそれが芸工大の特徴といわれるくらい全国的に評価されて定着してきているんですね。全体的にみるとそういった傾向を持った作品は多くなってきています。本学においても年々外部の評価が上がっていて、昨年のプロダクトの卒展会場は来場者も多く、好評をはくしました。それはなぜだと思う?
木口
生産は作っているものが「物」だからわかりやすく、デザインの社会の認知度も上がってきている傾向があるかと思います。
降旗
わかりやすいのも一つの要因だけど、常識からちょっと外れた視点でのモノの見方が、新鮮な印象を与えて、心を打つんだろうな。
――
これから社会に出ていく学生にどのような事を教えていますか?
降旗
限定して特化したプロフェッショナルを養成するというよりは、将来どういう所でも入っていけるような幅広い「デザインの基盤能力」を持った人材を養成する方針です。基盤能力のひとつは先程話した発想力。そして、コンピューターが盛んになるにつれて捨ててしまった、実際に手を使って造るという物造りの原点。そして新しい時代に即したコンピューター教育。この三つ(発想力・手作業・コンピューター)を重点的に教育してきました。
――
卒展の制作で「家具」を選んだ経緯について
木口
3年生の後期で成型合板をしたのがきっかけです。卒業制作においては、できる限り自分の力でできる一番高い技術の「成型合板」を使って自分の好きなインテリアや家具を作りたいと思い、それが今の制作に繋がっています。卒業後はガラスの会社に行きますが、その会社も家具を作っているので、今後にも繋がる部分があると思います。
――
この大学に惹かれた理由は何だったのですか?
木口
大学に入ってから思ったのは、造る環境設備や制作のスペースが整っていることです。その点で、芸工大を選らんで、正解だったと思います。いい教授もいますし。
降旗
彼女は山形出身ですから、山形に惹かれてというよりは大学の設備に惹かれてかな?(成型合板の機械は)全国的に見ても数個しかないんじゃないでしょうか。
降旗
ゼミに分かれるのは正式には四年ですが、だいたい三年次に何を選択するかで方向を定めます。彼女は成長しています。仕事は早いほうでした。そういう意味ではクラスをリードしてくれるので助かります。
木口
デザインは決めてからすぐやるほうなので、あまりぶれたりはしなかったです。
降旗
彼女は悩んでいるけど、決断力が早いから進んでいますね。
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制作について、ジャンルが違っていても相談しますか?
木口
それはもう、よくあります。研究内容が違う人の感想やアドバイスは自分にとってプラスになることが多いです。形やデザインについてどうだろうかとか。
――
東北芸術工科大学のプロダクトデザインの特色
降旗
芸工生の印象は一言で言えば非常に素直。こんな素直な学生はいないんじゃないかな。話しを素直に聞いてくれる一方で、作品や人の個性も含めてもっと灰汁の強いのがいてもいいかな。
――
卒制では実用製品ではない作品も多くありましたが、それらを売買するためにクライアントで苦労することは?
降旗
クライアントで苦労するのは(社会に)出てから。全体的な学科の特徴として、発想力を重視した教育をしているものですから、すぐ役立つものというよりは、むしろ考え方の種を作れるように教育をしています。学生も実際そういう取り組みをしています。もちろんプロになれるまでの年月はその人の素質にもよります。卒業した次の年には製品化されている人も結構いますしね。世の中に流通する製品を制作するにあたり、会社に入ってからまた叩きこまれてぐっと伸びる人もいるので一概には言えません。石の上にも三年っていいますから、三年くらいはじっくりみたほうがいいかもしれませんね。
木口
今年の4年生ほとんどデザイン関係。デザイナーというよりは、学科的に様々な方向に分かれられるので、何かしらデザインに関わっていく人は多いようです。私の場合はガラスの会社に入って、将来的には自分で作って自分で売ることになると思います。
降旗
プロダクト製品を自分で作って売ることは美術の世界とは違って難しいことですが、組織の中で物を作り社会に流通させる経験をふまえ、自分で事務所経営の経験を積んだりすると叶っていきます。
木口
大学では身近にあるものを作ってきたので、それが日常で使われていことが理想です。
降旗
それぞれどんな道に行くのかはわかりませんが、自分の持っているものを、精一杯出すことが一番大事かな。精一杯出していればどこかで花開いて世の中に出てくるんだろうと思うんですね。努力していると絶対誰か見ててくれるんですよ。自分の持っているモノを信じているなら、突き詰めてやる事につきるんじゃないですかね。
――
作り手とお客さまとの間で、作品に対しての見方や受け取り方の違いはありますか?
降旗
プロダクトでは、最初から「物」としての親しみを持って作品を見るため、そんな大きな違いは無いと思います。また、彼らの視点−常識的なものを常識でない視点で考え作ったものが、人に新鮮な驚きを与えて評判が良くなっているということは、来場者に上手く伝わっているのかもしれないなと思います。
木口
会場で、来場者から「どういう意味」って質問はほとんど聞かない。みたまま、そのまま、頭の中に入っていってくれているのかな。見解のギャップは私たちが思うよりも少ないのかもしれないですね。
※成形合板:単板を型にはめて三次曲面に形作り積層接着した合板。曲面をできる上、強度の面で有効な技術。成形合板の機械は全国的にみても少ない。
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