修士課程 芸術文化専攻
芸術文化専攻について
芸術の力で、社会と人をつなぐ。創造を未来へ拓く専攻。
芸術文化専攻は、芸術を社会の中で生きた営みとして捉え、創造を「作品」にとどめず、人や地域、世界との関係の中で育てていくことを目指す専攻です。制作・研究・批評・保存・教育といった多様な実践を横断しながら、芸術が人の意識や環境に働きかけ、新たな価値を生み出していくプロセスを探究します。
表現の最前線で創造に挑むアーティスト、文化の記憶を未来へ継ぐ保存修復の専門家、そして芸術を通して人を育て社会とつなぐ教育者。それぞれの立場から芸術の可能性を広げ、感性と知性の両輪で、変化する世界に応答できる人材を育成します。芸術の力を通して、次代の文化と社会を創り出す拠点として、芸術文化専攻は新たな挑戦を続けています。
教育プログラム
創る・考える・伝えるを往還し、芸術の力を社会へと開く学び。
本専攻の教育プログラムは、理論と実践を往還しながら、創造を社会的な「対話」へと発展させる体系で構成されています。通年科目「クリエイティブ・ダイアログ」では、自身の作品や研究を言葉で紡ぎ、批評や議論を通して他者と向き合う力を養います。表現を内省にとどめず、社会に開かれた思考へと昇華していく中核科目です。
アートプロジェクトやフィールドワークでは、地域や文化の現場に実際に身を置き、芸術が人や社会とどのように関わり、環境を変えていくのかを体験的に学びます。さらに専門演習を通じて、文化を守り、育て、次代へと伝えていくための実践的な知と技を修得します。
制作・研究・対話・実践を循環させながら、芸術を社会の中で機能させていく力を段階的に育成すること。それが芸術文化専攻の教育プログラムの核となっています。
領域について
ファインアート・工芸・複合芸術
表現の源泉を掘り下げ、
社会と響き合う創造を。
絵画・彫刻・工芸・複合芸術などの表現領域を横断し、制作と理論を融合した学びを展開します。クリエイティブ・ダイアログを通して批評的思考を深め、アートプロジェクトや地域での創作活動を通して、表現を社会的対話として実践します。素材・技術・コンセプトを自由に組み合わせ、新しい芸術の形を切り拓く力を育てます。
保存修復・歴史文化
文化を未来へ継承し、
地域の記憶を紡ぐ専門教育。
文化財保存修復研究センターと連携し、文化財や歴史資料を対象とした実践的教育・研究を展開します。保存修復の高度な専門技術を学びながら、分析・記録・アーカイブなど多面的な視点から文化を未来へ伝える力を養います。地域に残る歴史文化の調査・研究にも取り組み、理論と現場実践を往還する学びを通じて、専門職としての応用力を培います。また、学部との連携による一貫教育を通して、基礎から発展までを段階的に修得し、文化財・歴史文化の専門家として社会に貢献できる人材を育成します。
美術教育学
芸術で人を育て、
社会を豊かにする教育実践へ。
芸術を通した学びの意義を探究し、教育現場や地域社会での実践力を磨く領域です。美術教育の理論・方法論に加え、ワークショップや授業設計、教材開発などを通じて、創造的な指導力を身につけます。芸術を「教える」ことから「共に学び、創り出す」ことへ。学生一人ひとりの感性を尊重し、他者との関わりを育む教育のあり方を探りながら、学校教育・地域文化活動など多様な場で活躍できる教育者を育てます。
教育目標・育成する人材像
芸術文化専攻は、「創造を社会へ生かす力」を備えた人材の育成をめざします。
- 芸術の意義を理解し、
持続的に探究を深める力をもつ人 - 研究と制作を往還し、
表現を社会へ発信できる人 - 文化の継承と創造を両立し、
地域や世界に貢献できる人
芸術の力を通して人と社会をつなぎ、次世代の文化を創り出すリーダーの育成を目標としています。
カリキュラムマップ・履修モデル
1年前期
基礎理論科目+専門研究Ⅰ+
クリエイティブダイアログ
1年後期
フィールドワーク+アートプロジェクト+専門研究Ⅱ
2年前期
アートマネジメント+特講科目+専門研究Ⅲ
2年後期
修士論文・修士作品制作+大学院レビュー
各研究領域の特性に応じた履修モデルを用意し、学生一人ひとりのキャリアプランに合わせた学修計画をサポートします。
特徴的な教育科目
アーティスト育成
アートプロジェクトA・B
東北の無垢で雄大な自然を舞台に、芸術が生まれる環境とプロセスを探究する科目です。夏と冬、それぞれの季節がもたらす時間の流れを体験しながら、アートコンテンツとしての視点と、自らプロジェクトを構想・運営するディレクション力を実践的に磨きます。
フィールドワーク演習
歴史・文化の文脈から作品の必然性を立ち上げる視点と、人や社会との関係性から作品の意味を見出す視点という、2つの眼を備えたアーティストを育成する演習です。現場に身を置き、身体全体でフィールドを味わうことで、制作の根拠を深め、思考を刺激します。
アートダイアログ & アートグラフィー
自身の研究を他者に伝え、論じ、言語化する力を体系的に高める科目です。制作中心の研究では不足しがちなプロセスの検証や思考整理を行い、研究を持続的・主体的に進めるための方法論を習得します。素材・歴史・検証を多角的に扱い、アーティストとしての探究を長期的に支える“研究の筋力”を育成します。
リーチアートイングリッシュ
(Reach Art English )
自身の作品や研究内容を、英語で自らの言葉として世界に届ける力を養う科目です。作品の背景、コンセプト、思考過程を的確に表現し、国際的な発表やディスカッションの場においても自立して発信できるコミュニケーション能力の獲得を目指します。
展示発表、プレゼンテーション、ステートメント作成などを通して、アーティスト・研究者として国際的な活動に対応できる実践力を育成します。
ローカルイノベーション
アートの思考を他分野へと拡張し、異業種との協働を通じて新たな価値を創出する科目です。多様な専門領域との対話からスケールや発想を広げ、社会に活かすアートの形を実践的に探究します。異分野と交わることの有効性を体感し、未来につながる創造の方法を学びます。
文化財保存修復研究センターとの
連携
保存修復インターンシップ・
歴史文化インターンシップ
文化財保存修復研究センターが担う受託事業や教員の研究プロジェクトに実際に参加し、実在する文化財の調査・記録・処置補助などに関わる実践的な科目です。
学内にいながら専門現場と同水準のプロセスに触れ、保存修復の実務の流れを体系的に理解します。大学院の学びと現場経験が密接に結びつくことで、専門職として求められる基礎的な技術力と判断力を身につけ、将来に活かせる確かな実績として証明できる経験を積むことができます。
保存修復実習
東洋絵画、西洋絵画、立体修復、保存科学の各分野に精通した国内トップクラスの保存修復技術者、保存科学者、学芸員などの専門家を招聘し、本学の教員と連携しながら、専攻する学生の研究テーマに即したプログラムを構築します。
研究テーマとより深く関わる専門家の指導のもと、文化財分野における最新の研究成果に触れ、自身の研究を深化させることで、保存修復分野で活躍できる優秀な専門家の育成を実現します。
歴史文化マネジメント特講
地域に残る歴史文化資源を未来へつなげるための調査・分析・活用方法を体系的に学ぶ科目です。文化財や歴史遺産を対象に、資料調査・記録・評価といった基礎的プロセスに加え、地域との協働のあり方や文化資源を生かした企画立案などを実践的に探究します。
文化財の専門家、地域文化担当者、行政職など、歴史文化を扱う多様な専門領域に対応できるマネジメント能力の獲得を目指します。
保存科学特論・保存環境論
文化財を科学的な視点から捉え、保存・修復・活用の基盤となる知識と判断力を養う専門科目です。文化財の材質や構造、劣化の要因、保存環境の考え方などを体系的に学び、文化財を長期的に守り伝えていくための科学的根拠を身につけます。
修復分野のみならず、考古学や博物館学の領域においても不可欠となる保存科学の考え方を、大学院レベルでより高度に修得し、専門職や学芸員として信頼される実践力の基礎を築きます。