2020.02.13インタビュー

やりたいこととのギャップが仕事の原動力に/LINE株式会社 卒業生 吉田菜津子

企画構想学科の卒業生、吉田菜津子(よしだ・なつこ)さんは、2019年春から無料通信アプリをはじめ、さまざまなサービスを提供するLINE株式会社に勤務されています。
企画構想学科の二期生である吉田さん。社会人となった今、学科での学びがどのように生かされているのか、現在のお仕事ぶりについて、これまでのキャリアなどとともにお聞きしました。

仕事をするなかで見えてきた、大切にしたいこと

――現在のお仕事内容を教えてください

LINEやLINEのファミリーサービスを中心とするアプリケーションに広告を配信する「LINE広告」というサービスを担当しています。現在は、SMB(=Small and Medium Businessの略。中小企業もしくは中堅中小企業のこと)向けの部署にいます。これまで「LINE広告」にご出稿いただくのは、大手企業が中心だったんですが、中堅中小企業も広告を掲出しやすい新しいサービスが2019年11月にリリースされました。私はそのリリースにあたり、カスタマーサポート部門の立ち上げを担当して、関係する様々な部署と打ち合わせをして方針を決めたり、オペレーター向けに対応マニュアルを作ったりしました。

――吉田さんは以前、別の企業にお勤めだったとお聞きしました

学生時代にはボブ田中 先生ゼミに所属していたのですが、先生が広告代理店の出身だったこともあり、広告やデザインを扱う仕事をしてみたいと思っていました。

大学卒業後、都内の印刷会社に就職しました。所属は制作部で、取材・編集・コピーライティングを担当し、企業の社内報や製品カタログ、大学のパンフレットなどを作りました。大学のパンフレットは、難易度が高かったですね(笑)

この会社には4年勤務したんですが、仕事をするなかで、オーダーメイドで作るというのがあまり向いていないことがだんだん分かってきて。別な言い方をすると、ひとつ最高のプロダクトを作って、それをたくさんの人に長く使ってもらうというビジネスモデルの方に興味が出てきたんです。そんな理由から、webマーケティングツールの開発・販売を手がける会社に転職しました。

※企画構想学科教授。株式会社ボブ田中事務所代表取締役。イノベーションデザイナーとして多くのブランド構築や商品開発に携わるとともに、産学共同プロジェクトを推進している。詳しいプロフィールはこちら

――転職された会社では、具体的にどんなお仕事をされたんですか?

SEO(Search Engine Optimizationの略。検索エンジン最適化のこと)をお手伝いするツールを手がける会社だったんですが、そこで「カスタマーサクセス職」を経験しました。

カスタマーサクセスというのは、営業とサポートのちょうど中間みたいな感じです。こちらが提供するサービスは、半年または1年おきに更新時期を迎えるため、カスタマーサクセス職のメンバーは、お客様に成果を出していただくことで、次も更新もしてもらえるように、使い方を教えるセミナーを開いたり、コンサルティングをしたりするんです。この仕事はすごく好きでしたね。

でも、取引先のコンサルをしていくなかで、SEOしか提供できないことにもどかしさを感じるようになって。企業の課題を解決する方法っていろんな種類があって、本当だったらSEOより良い方法があるのにそれをアドバイスできない。自社の商品をアピールしなくてはいけないですから。

2社を経験してみて「いろんな商材を扱っていて・自社でプロダクトを持っていて・それらを長く使ってもらえる」そんな企業で働きたいと思い始めたことが、LINEに転職した理由です。

――とは言っても、LINEへの転職って難しそうですよね

前職で出会ったカスタマーサクセス職って、日本ではここ数年で広まった職種で、私が学生時代に就職活動をしていた頃はまだなかったんですね。だから、経験者がそんなにいないっていう市場の状況があって。カスタマーサクセスの仕事をしたのは1年でしたが、あと2~3年したらカスタマーサクセスの経験者が増えて倍率が高くなる、転職するなら今だなと思いました。

カスタマーサクセスの職種で募集している会社をいくつか受けましたが、LINEも含めて、どこも「経験者が来たのは初めてだよ」というリアクションでした。タイミングが良かったんだと思います。

あと、LINEっていいなと漠然と思い始めてからは、LINEの「求める人材」をチェックして、それに見合う経験・技術を2社目で全部準備しておこうと決めて仕事をしていましたね(笑)

――社会人になってから、特に印象に残っている出来事はありますか?

2社目を退職する際、その旨を担当していた取引先に連絡したら、達筆な手書きのお手紙をいただいたり、「うちに来ないか」と声をかけてもらったりしました。仕事で接している時には、私のことをどう思っているかは分からなかったのですが、そうした反応をもらえたことで、役に立てたんだと思えてうれしかったですね。

LINE本社のある、JR新宿ミライナタワーからの眺望。

考えながら行動して気付いた、自分の役割

――企画構想学科を選んだ理由は?

高校生の頃は、興味のあることが特になかったんです。将来やりたいこともない。東京の大学に進学するという選択肢もありましたが、何もしたいことがないのに東京に出るのはどうなんだろうと思って。それなら、自宅から通える山形県内の大学に行こう、したいことがないのであれば、目の前の4年間を楽しもうと思いました。

企画構想学科は、当時できたばかりの学科だったので、ロールモデルとなる先輩や就職実績のデータがなかったんですが、逆に何になれるか分からない方が面白いなって。企画構想学科を選ぶことで、何か面白いことが起こるんじゃないかと思いました。

――学生生活で、特に思い出に残っていることは?

初めて開催した「月山青春音楽祭」のスタッフ副代表を務めたことと、「つや姫なんどでも」プロジェクトの代表を務めたことです。今思い返すと、いつもいつの間にか周囲に巻き込まれている感じでした(笑) 「つや姫なんどでも」も、友だちに誘われて参加することにしたんです。それなのに、最初のオリエンテーションの時に、友だちみんなに用事があって私しかいなくて、そのまま代表になってしまって。

最初はパッケージデザインだけというお話だったんですけど、「商品のコンセプトがしっかりしてないと売れないよね」って話になって、商品開発からやらせてもらって。プレスリリースを出して、お披露目会を実施して。ほかにもPRのために、フランス料理店に依頼して、日本酒に合う限定コースメニューを作ってもらったりもしました。このプロジェクトでひと通り経験させてもらったことは、大きな糧になりました。

純米吟醸酒 つや姫なんどでも:若い人へもっと日本酒の美味しさを伝えたいとする「東の麓酒造㈲」(南陽市)から依頼を受け、企画構想学科学生有志が商品コンセプト、企画、販売戦略を作成し、戦略に沿ってラベルデザインをグラフィックデザイン学科有志が担当。つや姫の特質(冷めても美味しい、毎日食べても食べ飽きない)を生かし、何度(何℃)でも美味しく飲めることを印象的に表現。発売の翌年に「山形エクセレントデザイン2013」において大賞を受賞している。

――なかなか経験できないことばかりですね

そうですね。実際に商品も売れて、酒造会社の方々からも喜んでいただけましたし。酒造会社の方とはまだご縁があって、東京にお越しになると連絡をくださり、みんなでランチやお酒を楽しんだりします。

月山青春音楽祭も、最初は深く関わらないつもりだったんです。「大変そうだな」と思って(笑) でも思うところがあってアドバイスをしていたら、いつの間にか副代表になっていました。

代表がみんなに喝を入れたり、モチベーションを上げる担当で、もう一人の副代表が外部との渉外を担当して、私はプロジェクト全体の監理を担当しました。私の仕事の一つに「役割分担」があったんですが、これがとても大変でした。メンバー一人ひとりのやりたいことを考慮しながら、適性を見て仕事を割り振るんです。プロジェクトの後半では「人事異動」を行ったりもしました。 異動してもらう人だけではなく、そのセクションのリーダーにも同席してもらって、「〇〇さんにはこんないいところがあるから、この仕事をぜひやってほしい」なんてふうに説明するんです。そうやってプロジェクトをまわしていきました。

月山青春音楽祭:山形県西川町にある廃校を会場に2012~2015年まで開催した音楽イベント。地域のコミュニティ・つながりの希薄化を音楽で活性化するという試みに企画構想学科の3年生が取り組んだ。

こうした活動をとおして、「やって学ぶ」っていうのは経験できたように思います。言われてやるよりも、自分で考えて行動に移した方が腑に落ちますから。

あと、月山青春音楽祭では、100ページもあるイベント当日の運営マニュアルも作りました。そして今も仕事で業務マニュアル作っているという(笑) 企画構想学科にいましたが、いろんなコンテンツを考えるのは他のメンバーで、私はそれをまとめる役割が多かったように思います。自分は企画よりも、業務フローを考えたり、管理をする方が向いてたんだろうなって。だから今の仕事に行き着いたんだと思います。

――今後、挑戦してみたいことはありますか?

まず、今はSMB向けのサービスを担当しているので、仕事をとおして地域の事業者にも貢献できたらいいな、というのはありますね。山形にも中堅中小企業がたくさんありますので、この事業をとおして、地元である山形のお役に立てればと考えています。

それと、学生時代の仲間と一緒に何かできたらいいな、と考えています。今もすごく仲良しで、今年もみんなで旅行に行きました。千葉の九十九里でコテージを借りて、バーベキューをして。みんな仕事へのモチベーションが高くて、人と話すのが大好き。学生時代に私たちのゼミでオリジナル駅弁の企画を考えたんですが、当時はさまざまな事情でボツになったことがあって。今もみんなで集まる度に「そのうち、お弁当屋さんやりたいよね」という話で盛り上がるんですよ(笑)

――これから芸工大を受験する後輩たちにアドバイスを

高校生のうちにやりたいことが決まっている人って、実は少数派なんじゃないかと思います。それに、今の高校生が就職する頃には、私たちが知らない新しいビジネスやポジションが生まれているかもしれません。だから、やりたいことを見つけることと同じくらい、見つけたらすぐに取り組むことのできる行動力が大事なんじゃないかと思います。私がフットワーク軽くフィールドを変えてきたのも、そういう力を身に付けられたからかもしれないですね。

企画構想学科なら、先生たちがたくさんのチャレンジする機会を与えてくれるので、それにしっかり向き合っていけば、きっと人生がおもしろい方向に進むんじゃないかなと思います。

自分にはどんな仕事が向いているのか、それが分からずにいる社会人も多いのではないでしょうか。その点、吉田さんはすでに自分の特性・強みを認識していて、それを最大化できる場所の精度を上げてきたのです。
企画構想学科の実践的な取り組みは、参加する学生一人ひとりに、どう立ち回り、チームに貢献するかを考えさせる場でもあります。大学でのこうした経験が吉田さんのキャリアアップの土台になっているのだろうと感じました。

(撮影:志鎌康平 取材:渡辺志織、企画広報課・須貝)

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東北芸術工科大学 企画広報課
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