絵は子どもたちの成長を支えるコミュニケーションツール/小学校教諭・卒業生 小見七望

インタビュー 2021.04.11|

小学2年生の担任教諭として、学習面から生活面まで幅広く指導を行っている小見七望(おみ・ななみ)さん。赴任して最初の2年間は、なかなか仕事に慣れずうまくいかないことも数多く経験したそうですが、現在は子どもたちや先生方に支えられながら、日々幸せな思いで教職の仕事に当たっていると言います。そんな小見さんに、学校でのお仕事のことや日本画コースで学んでいた頃の思い出についてお聞きしました。

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3年目で辿り着いた「教員になって良かった」という思い

芸工大で小学校の教職課程を選択していた小見さん。見事、山形の教員採用試験に現役合格を果たし、2018年4月に山形市立南沼原小学校へ赴任しました。

――はじめに、学校でのお仕事内容について教えてください

小見:今は2年生の子どもたち29人を受け持っていて、その子どもたちの学習指導ということで、国語・算数・生活科・図工・音楽、あと道徳を教えています。また学習指導以外にも生活面や給食、清掃の指導、さらに委員会やクラブ活動の指導などもありますね。

日本画コース卒業生で小学校教諭の小見七望さん インタビュー中の様子

朝は7時50分くらいまで出勤して、そこからクラスの子どもたちと1日一緒に過ごします。みんなが帰るのを見送ったら、次は高学年の子たちのブラスバンド指導にあたり、そして夕方から先生方と会議や打ち合わせをして、その後、テストの丸付けや提出物の点検、場合によっては子どもの様子について保護者の方に連絡を入れたりして、大体19時くらいに帰るという流れですね。

――教員になられて3年経ちますが、実際に働いてみて思うことは?

小見:小学生って学年によってこんなにも変わるのか、と。1年生はまだまだ小さくて指示がうまく通らなかったりする一方で、6年生は中学生並みにしっかりしていて何でもこなせますからね。ちなみに2年生はとてもかわいくて、毎日すごく癒されています(笑)。

日本画コース卒業生で小学校教諭の小見七望さん 小学校2年生の国語の授業をする様子
小見さんの説明に聞き入る子どもたち。これは国語の授業の様子。(写真提供:小見さん)

ただ最初の2年間はなかなか仕事に慣れなくて、うまくいかないこともたくさん経験しました。私に教職は向いていないのかも、と悩むことも多かったですね。でも、子どもたちや先生方がそんな私を支えてくれて、3年経ってようやく「教員になって良かった」と思えるようになってきたところです。

――そもそも教員を目指そうと思ったきっかけは?

小見:実は、家族からは地元の国公立大学の教育学部を勧められていたんです。でも小さい時から絵を描くのがすごく好きで、せっかく大学に行くのであれば絵の専門的な技術を学びたいと思っていたので、「美大に行きたい」と親に伝えました。そしたら「教員免許を取ることが条件」という流れになって。私自身、自分の就職のチャンスや将来の可能性を広げるためにも教員免許は取りたいと思ったので、教職課程を選択することにしました。

日本画コース卒業生で小学校教諭の小見七望さん 黒板脇に貼られたかけ算の表。小見さんの手作り
黒板脇に貼られたかけ算の表。もちろん小見さんの手作り。

――中学・高校だけでなく、小学校の教職課程も取ることにしたのは?

小見:芸工大で小学校課程のプログラムが始まったのは、確か私の2つ上の先輩あたりからだったと思うんですけど、地元の群馬で教員採用試験を受ける場合、小学校教諭の免許を持っていると加点の対象になり採用されやすいというのがあったので、そこにチャンスを感じたというのが大きいですね。しかも群馬では中学・高校の美術教員の募集がここ数年無かったので。

ただ、このプログラムは聖徳大学の科目等履修生になる必要があって、最初のガイダンスの時点で、スクーリングもあるしレポートも大量にあるので途中で止めてしまう人が多いという話も聞いていたんですが、そこは取得を目指して2人の友人と一緒に頑張ることを決めました。

――そして実際に教員になった今、どんな時にやりがいを感じていますか?

小見:私は漢字のノートにすごくやりがいを感じますね。小学校の低学年で習う漢字は、今後習っていく漢字の基本の形になるため、間違えたまま覚えてしまわないよう「とめ・はね・はらい」なども細かくチェックするようにしているんですが、最初は「厳しい」と言っていた子どもたちがやりがいを感じ始めたみたいで、「あ、また丸増えた!」って言いながらうれしそうにやっているのがすごくいいな、って。練習していくうちに自分が上達していることが分かってくるみたいですね。

日本画コース卒業生で小学校教諭の小見七望さん 子どもたち一人一人のプリントにコメントを添えている
一人一人にコメントを添えて。こうしたやり取りが、子どもたちのやりがいにつながる。

私は私で、漢字ノートの丸付けをしながらみんなの字が上手くなってきていることを実感して、そこに楽しさとやりがいを感じています。

多様性に触れた日本画コースでの豊かな時間

――日本画を学びたいと思ったきっかけは?

小見:単純に一目惚れですね。予備校とかに置いてある受験用のパンフレットを見た時に、日本画コースの細密着彩というか静物着彩の作品を見て、「水彩画でこんなに綺麗に描けるんだ」と感動して、「私もこんな風に水彩画を描けるようになりたい」と思ったのがスタートでした。

また、日本画ならではの画材の色数の多さや色合い、素材感、表面がキラキラした画具などにとても魅力を感じました。

――芸工大で4年間過ごす中で得られたものは?

小見:まず、美術科には個性的な人がいっぱいいました。例えば、国外まで虫採りに行っちゃう人とか、夏休みに自転車で大阪まで行っちゃう人とか(笑)。そんな仲間たちと会話していく中で、世の中にはいろんな人がいて、いろんな考え方があって、いろんな生活スタイルがあることを知りました。もちろん絵の描き方もいろいろあって、私とは全く違う色の使い方をする人がいたりするところもとても楽しかったですね。

日本画コース卒業生で小学校教諭の小見七望さん インタビュー中の様子

それから、大学生活を無駄なく有意義に過ごしたいと考えていたので、いろんなことにチャレンジしました。美術科や日本画の勉強はもちろん、先ほど話した小・中・高の教職課程や教職関係のボランティア、さらにアルバイトとサークル活動も4年間続けました。毎日忙しかったですけど、制作の締め切りが迫っている時や教職のレポートに追われている時は、ちょっとだけサークルに顔を出して息抜きしたり、逆に他のことで大変な時は、制作することで気分転換したり。そうやってたくさんの人や経験と出会えたことこそが、大学生活で得られたものだと思っています。

――日本画での学びが今の仕事に生かされていると感じる時は?

小見:これは山形の小学校ならではかもしれないんですけど、運動会の時に、すごく大きな「応援看板」というものを作るんですね。その時に、日本画の大きい絵を描く技術がとても役に立ちました。とにかく絵の具を大量に使うので、一気に作業できるように100円ショップで発泡スチロールの容器を買ってきて、刷毛もいくつか準備して、運動会に間に合うように計画を立てて進めていったんですが、その作業が本当に日本画の制作とそっくりで、経験を生かしながら子どもたちと楽しく作ることができて良かったです。

日本画コース卒業生で小学校教諭の小見七望さん 小見さんが制作を指導した、運動会の「応援看板」
こちらが「応援看板」。できあがった看板を目にして、子どもたちはさぞ喜んだだろう。(小見先生の勤務する小学校は児童数が多いため、運動会も紅白戦ではなく、赤・青・白の3つの組に分かれて行われる。柱同士による対決。)(写真提供:小見さん)

あと図工の授業をしている時、子どもたちに「こんな描き方もあるよ」とか「同じ材料でこんなのもできるよ」というのを教えてあげると、「やってみたい!」「できたー!」と喜んでくれるので、そういう反応を見られるのも楽しいですね。

――ちなみに、個人的な絵の制作は今も続けていますか?

小見:日本画を描きたいという思いはすごくあって、画材もキープはしてあるんですけど、部屋が狭くてなかなか広げられないんですよね。でも絵を描くことは好きなので、同僚に頼まれて結婚式に使うウエルカムボードを水彩で描くといったようなことはあります。

それから、クラスの子どもたちとコミュニケーションを図る上でイラストを描く機会が結構あるので、そういう意味では今も絵を描き続けていますね。

日本画コース卒業生で小学校教諭の小見七望さん 子どもたちの自習ノートに丸付けをする

――絵が、コミュニケーションツールとしてしっかり機能しているんですね

小見:授業や生活の中で低学年の児童に何かを伝えたいと思った時、それをすぐに図解して視覚的に説明することができる。そこに、絵を描く力を自分の強みとして生かせている実感があります。例えば遠足に行く時の持ち物を伝えたい時、言葉で伝えるだけじゃなく黒板にササッと人の絵を描いて、そこに帽子とかバッグとか筆記用具といった持ち物の絵を描いていくと、子どもたちも理解しやすいみたいで。

日本画コース卒業生で小学校教諭の小見七望さん 図工の授業の板書
図工の授業の板書。時に絵の方が物事を分かりやすく伝えられることの好例だ。(写真提供:小見さん)

あと大学時代、酒田市立西荒瀬小学校の黒板アートプロジェクトに参加させてもらったんですが、運動会などのイベントがある時に黒板アートを描いたら子どもたちがすごく喜んでくれたんですよね。やっぱり可視化できるというのは、小学校の先生にとってすごくいいことかもしれません。

2018年3月、酒田市立西荒瀬小学校6年生の卒業をお祝いして、サプライズの黒板アートを制作。

積み重ねてきた経験の全てが、自分を支える大きな力に

――小見さんが受験生に伝えたい芸工大、そして山形の良さは?

小見:芸工大は構内にカモシカが出るくらいすごく自然豊かで、しかもすぐ裏には丘があるので、ふらーっと登って気分転換できるのがすごくいいなと思ってました。これが都会の大学だったらそうはいかなかっただろうし、ビルも人もいっぱいだったろうな、って。

それから、これまで県内のいろんな地域に行かせてもらって、山形は温かい人たちとの出会いが多い場所だと感じました。当時所属していた「民俗舞踊団《郷》」というサークルの活動で年に1回、大蔵村の合海地区というところで開かれるお祭りに参加させてもらっていたんですが、たった1日だけの参加なのに地域の方が顔を覚えてくれていて、「今年も来たのがー。いっぱい食べでげな」と言って、外部の大学生である私たちにいろんなものをご馳走してもてなしてくれて。まるで第二の故郷のように温かい人付き合いがある土地柄だな、とうれしく思いました。

大学にいる間は時間がいっぱいありますから、皆さんにもぜひいろんなことにチャレンジしてほしいですね。そこで得た経験は、後に意外な形で生きたり、また意外なつながりの発見につながったりするので。

――あわせて、芸工大で小学校の教職課程を取りたいという人にもアドバイスを

小見:私は小学校の時、母に言われていろんな習い事をしていました。学習塾やピアノ、水泳、書道、バスケットボールなどとても幅広く。そんなさまざまな習い事に救われたという実感があって、小学校の教員採用試験って、実技試験があるんですよね。例えばマットとか鉄棒、ボールを使ってのドリブルや水泳25m、それからピアノの演奏や歌唱などいろいろ。そのため、急きょ短期でピアノのレッスンを受けている先輩もいたりしました。

その点、私はピアノも水泳もバスケットボールも昔習っていたので、そのおかげで実技試験を乗り越えられたところがあると思っています。もし小学校の教員免許を目指すのであれば、皆さんも時間があるうちに習い事をしておくといいかもしれません。

日本画コース卒業生で小学校教諭の小見七望さん インタビュー中の様子

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いろんなコミュニケーションの取り方がある中、「絵を描く力」を生かして、子どもたちのやる気や学ぶ意欲を引き出している小見さん。子どもたち一人一人に向ける温かく優しい笑顔もとても印象的でした。今回紹介した小見さんのように、教員採用試験を現役で合格する学生が多いのも芸工大の大きな特長となっています。
(撮影:瀬野広美 取材:渡辺志織、企画広報課・須貝)

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東北芸術工科大学 企画広報課
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