課題解決に全力を尽くす漢になりたい/コミュニティデザイン学科3年 高橋知輝

インタビュー 2020.06.24|

人口減少が引き起こす地域課題は様々ありますが、住民自身が課題に向き合わなければ、本当の意味での解決はないともいえます。

コミュニティデザイン学科(※)では、地域課題を「地域住民の方々と楽しく美しく解決する手法」を学ぶため、学生たちが実際に地域に関わらせていただきながら実践経験を積んでいます。

現在、このコロナ禍で前期の授業は全てリモートとなり、いつものように地域に関わることができなくなっていますが、そんな状況下でも、「自らが積極的に動くこと」をモットーに、未曾有の課題に対してアクションを起こそうとしている同学科3年生の高橋知輝(たかはし・ともき)さんをインタビューしました。彼は同学科内で“たかともさん”と呼ばれています。

(※)2014年に、日本初のコミュニティデザイン学科として設置。複合的な手法で地域の課題解決に貢献する人材を育成。「コミュニティデザイン」はコミュニティデザイナーの山崎亮 氏(本学客員教授)が浸透させた言葉で、初代学科長に就任した。

――たかともさんは、ブログやYouTubeなどのSNSで情報発信を多数されていますね。先日も気仙沼のケーブルテレビの、ある番組を担当することになったとか

僕たちの学科には、コミュニティデザインの手法を用いて実際に地域に入り、地域課題の発見から解決までの仮説・実施・検証を通して学びを深める「スタジオ活動」があるのですが、このコロナ禍で活動が制限されて苦しんでいたんです。

僕自身は宮城県気仙沼市をフィールドとして学ばせてもらっているのですが、数ある地域課題の中で、この地域の方たちの「健康課題の解決」に焦点を当て、地域の方々と協働企画したフィットネス動画を、地元のケーブルテレビで放送してもらえることになりました。

実際のフィットネス動画は、東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科 気仙沼スタジオFacebookでも見ることができる。

――そのほかにもヒッチハイクやクラウドファンディングなど、大学生活に入ってからの短期間に積極的に活動されていますが、その背景にはどんな思いがありますか?

僕を突き動かす行動原理は「かっこいい漢(おとこ)になりたい」という思いです。今思えば、僕の周りには課題解決のため、己の宿命のために全力で働くかっこいい漢がたくさんいました。

自分自身も20歳くらいでそういう大人になりたいと思って活動してきましたし、学生に心の底からそう思わせ、努力して成長できる環境は、この学科ならではだと思います。

コミュニティデザイン
大学2年生の時に、「理想の漢」を探求するため、1ヶ月間に及ぶ「日本縦断ヒッチハイクで漢1人旅」を行った。

――今はリモート授業で、地域の方々との直接的なコミュニケーションが難しい状況ですが

僕たちが関わる地域にはご高齢者も多く、インターネット環境を使える方も限られているので、少人数で地域に入ることを検討したり、地元のNPOの方と連携して、できることからやっていこうと、諦めず前向きに考えています。

コロナ禍という世界的な社会課題や逆境に対し、受け身ではなく、自分たちでどう立ち向かっていくのか、今、僕たちが一体となって立ち向かっている経験は、今後、社会に出たときに逆境に立ち向かう力になっていくように思います。

――たかともさんが本学でコミュニティデザインを学びたいと思ったきっかけはなんだったのですか?

高校生の頃、コミュニティデザイン学科が毎年開催している「サマーアイデアキャンプ」に参加したことです。学科の先輩たちが地域にコミットできる場を用意してくれたので、アイデア発想や課題解決の経験をすることができました。

僕は今、このイベントの企画側に立っているので、高校生たちには、このコロナ禍でも経験を絶やさず、同様の機会を提供したいという思いがあります。

2019年8月9日に実施した「サマーアイデアキャンプ」でのアイデア創造ワークショップの一場面(開催地:新庄市)。ブルーのTシャツを着た本学学生たちが、参加者の高校生たちをサポートしている様子。

――今の高校生たちに、コミュニティデザインを学ぶことで、どんな経験が積めることを伝えたいですか?

これ、高校生が聞いて目を光らせるかは分からないんですけど、実際に地域に入るので、「実践で何回も失敗できる」ということです(笑)

――何も行動しないのではなく、身近なことから実際に動いて「失敗の経験を重ねる」という

はい。僕の出身が南三陸で父が地方公務員だったので、小さいころから地元愛があったこともありますが、社会を変えたいというような大きすぎる目標を掲げて動けなくなるよりは、まずは小さなコミュニティに目を向けることを大切にしてきました。

失敗しながらも取り組むことが、最終的に、地域、日本、世界を良い方向に変えていく一歩なのかなと思います。

コミュニティデザイン学生

――コミュニティデザイン学科では、話す、書く、描く、調べる、引き出す、創る、作る、組織化、まとめる、数えるなどの10の力が身につくと言われていますね

僕の場合は、ヒアリング力を活かして、地元の大人とやり取りしながら、住民の方々との合意形成、スケジューリングなども自分の力で行ってプロジェクトを進めていくことができるようになりました。

実際に社会に出て、自分の力で今起きていることに向き合うこと自体が、大きな学びになっています。

気仙沼
「気仙沼スタジオ」の学生メンバー(一番左が高橋さん)。

――目の前に具体的な課題を設定することで、最初はできなかったことが、できるようになるということもありますね

今取りかかっている学生主体のオープンキャンパスの準備(WEBサイトや動画編集)も、2月下旬頃から始めたのですが、他の仲間たちも独学で動画編集を学び、スキルを習得しました。

やり方はそれぞれで関わり方も違いますが、学びたいこと学んで、活かしています。

受け身ではなく、自分で考えて実践すること

――その学生主体のオープンキャンパスは、一体どのような内容なのですか?

このコロナ禍でオープンキャンパスの延期が決まった時期に、自分たちだけでも企画・実施してみようと思ったことから始まりました。

東北芸術工科大学 オープンキャンパス
延期後、6月28日(日)に開催することとなった「東北芸術工科大学WEB オープンキャンパス 」。(詳細はこちら


通常はどの大学も教職員が計画すると思うので、学生主体で企画・運営するのってあんまりないと思うんです。

僕たちが今一番に伝えたいことは、世界的な社会課題や逆境が目の前にあっても、「受け身ではなく、自分たちでどう立ち向かっていくのかを考えて実践する体験をしてほしい」というメッセージです。

これは、コミュニティデザイン学科の学びそのものとも言えますが、高校生にとっては分かりにくい部分があるので、どう伝えるのかを話し合いながら、オンラインの動画コンテンツとして制作しました。

コミュニティデザイン
オンラインでのオープンキャンパスのために準備した資料の一つ。チャートのリンクを進むと、同学科の過去の卒業研究をA~Fのタイプ別で見ることができ、コミュニティデザインとは何かが具体的にイメ―ジできる。(詳細はこちら

東北芸術工科大学オープンキャンパス
コミュニティデザイン学科3年生たちがオンラインオープンキャンパス掲載サイトのテスト試行で、コンテンツ制作者が一人ずつ内容を説明をしている様子。

――高校生たちに、特に伝えたい思いはありますか?

コミュニティデザインの面白さを知ってほしいのはもちろんですが、「自分たちの地域を変えるのは自分だ」ということです。

7月4日の学生主体のオンラインオープンキャンパスでは、自分に変える才能がないと思っている人でも、自分のアイデアをもとに、地域にアプローチすることの大切さを伝えていきたいです。

 

コミュニティデザイン学科にはいつも相手のことを思いやる学生さんたちがたくさんいます。高校生のみなさん、7月4日はZoomでのオンラインオープンキャンパスに参加して、たかともさんをはじめるとするコミュニティデザイン学科の素敵なセンパイたちと、実際に出会ってみませんか?きっと、自分の中の漠然とした思いを共有したり、何かをスタートするきっかけになる思います。

(取材:企画広報課・樋口)

 

オープンキャンパス

コミュニティデザイン学科学生たちによるオンライン・オープンキャンパス
2020年7月4日(土)

◎11:00〜12:00「地域が元気になる姿を考えるワークショップ」
​アイデア発想を基に地域課題を解決するアイデアを考えるワークショップです。

​対象:コミュニティデザインに興味がある、学科の授業が気になる高校生・受験生
​定員:16人
​参加費:無料

◎14:00~15:30「トークショー(質問相談会)」
リアルタイムで学生と教員の生の声を聞いて学生生活の様子や受験について知ることができます。

​対象:高校生・受験生
​定員:無し
​参加費:無料

※どちらも事前のお申し込みが必要です。お申込みはこちらからお願いいたします。

 

高橋知輝(たかはし・ともき)/東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科3年。宮城県南三陸町出身。小・中・高は野球に熱中し、現在、気仙沼を舞台にコミュニティデザインを学んでいる。大学入学後、3.11の恩返しの意を込め災害が起きた地域に必ず赴き、ボランティア活動に参加。大学1年で地域イベント開催のためのクラウドファンディング「プロジェクト『僕らが!』を実施・成功。大学2年では自身の研究と理想の漢を探求する1ヶ月に及ぶ旅「日本縦断ヒッチハイクで漢1人旅」を実施・成功。現在はYouTube漫画をフリーランスとして執筆し、節約したい大学生向けのブログ「おてもとにたかとも」を運営している。座右の銘は「若い、故に思考!挑戦!学習!」。好きな食べ物は「ラーメン荘 夢を語れ 小ラーメン野菜ニンニクアブラマシ、アブラ別皿、生卵別皿」。趣味は「似顔絵をおもしろおかしく描くこと」。研究内容は「東日本大震災から10年以降における、被災地域コミュニティの変化予想」。

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東北芸術工科大学 広報担当
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