第48回 孤独あれこれ~ザ・ローリング・ストーンズの巻|かんがえるジュークボックス/亀山博之

コラム

休暇と孤独

 前期が終わり、授業の仕事のない時期である。とはいえ、論文の書き直しの締め切りなどがあり「気が軽い」ということは一切ない。むしろ、人と話す機会もいきなり減り、心は重く、孤独になるばかり。わたしは、休暇の時期は気持ちが落ち込む傾向がある。これは改善すべき大問題だ、と最近よくかんがえているのだが、どうにもならない。

アッカンベーをする寿司
アッカンベーをする寿司

 気分転換になるかと思って東京で食べたマグロの海苔巻きでさえ、わたしに向かって「お前の孤独なんて知ったことか」とアッカンベーをしている気がした。

転石苔むさず

 ああ、このベロはストーンズですね、と乾いた笑いしか出ない。そんなわたしがおもむろに手に取ったレコードがこちら。

ザ・ローリング・ストーンズ「ミス・ユー」日本盤
ザ・ローリング・ストーンズ「ミス・ユー」日本盤

 ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)は実に息の長いバンドである。結成して今年で64年!うーん、”A rolling stone gathers no moss” すなわち「転石苔むさず」とはよく言ったものだ。活発な人には苔が生える暇さえないというわけだ。一方で、ロックンロール・バンドを腰を据えて60年以上も続けているという点では、彼らには苔むす岩の渋さがあるとも言える。彼らの顔に刻まれた深いシワがまたカッコいい。ヌルッとした美白な若造アイドルらが空虚に見えてしまう。

新譜「フォーリン・タングス(Foreign Tongues)」
新譜「フォーリン・タングス(Foreign Tongues)」

 で、今年も新作をリリースしているのだから、本当にすごい。見習いたい。新譜もすごいのだが、今回聴くのは、1978年の「ミス・ユー(Miss You)」だ。ライブで何度か聴いたことがあるが、ディスコ調のノリの良いリズムで、いつも大変に盛り上がる1曲である。ダンサブルな曲調とは裏腹に「寂しい」「恋しい」という内容で、孤独感を妙に煽ってくれる。きっと、湿った気持ちだからといって、女々しい曲にひたる必要はない、ということでもありましょう。

I’ve been holding out so long
ずいぶん長いこと こうやって耐えてるぜ

I’ve been sleeping all alone
ずっと独りで寝てるし

Lord, I miss you
ああ、会いたい


I’ve been hanging on the phone
電話にすがりついて待ってるぜ

I’ve been sleeping all alone
ずっと独りで寝て

I want to kiss you sometime
いつかまたお前にキスしたい


Well, I’ve been haunted in my sleep
眠っててもお前の幻影につきまとわれてるんだ

You’ve been starring in my dreams
夢にお前が出てくるし

Lord, I miss you, child
ああ、さびしい


I’ve been wanting in the hall
廊下でずっと待ってるんだぜ

Been waiting on your call
お前からの電話を待ってるんだ

When the phone rings
電話が鳴ったと思ったら

It’s just some friends of mine that say
友だちからだ

“Hey, what’s the matter, man?
「おい、どうした?

We’re gonna come around at twelve
12時頃行くからよ

With some Puerto Rican girls
プエルトリコの娘たちとな

that’s just dying to meet you
お前に会いたいって言ってる

We’re gonna bring a case of wine
ワイン1ケースも持ってくから

Hey, let’s go mess and fool around
バカ騒ぎしようぜ

You know, like we used to”
な、昔みたいによ」

Oh, everybody waits so long
おい、みんなずいぶん待たせるな

Oh, baby, why you waitin’ so long?
どうしてそんなに待たせるんだ?

Won’t you come on, come on?
戻ってきてくれよ

I’ve been walkin’ Central Park, singing after dark
セントラルパークを暗くなってから、歌いながら歩いてる

People think I’m crazy
オレがイカれてるとみんな思ってる

Stumbling on my feet, shuffling through the street
足がもつれて、フラフラ通りを歩いてる

Asking people, “What’s the matter with you, boy?”
人にこう聞くんだ「どうした、お前よ?」って

Sometimes, I want to say to, to myself
ときどき、オレは自分にそう言ってんだ

Sometimes I say
オレ自身にな


I guess I’m lying to myself
オレは自分にウソをついてるんだろうな

It’s just you and no one else
他の誰でもない、お前だけなんだ

Lord, I won’t miss you, child
ああ、お前なんか恋しくないぜ

You’ve been blotting out my mind
お前のことで頭がいっぱいだ

Fooling on my time
オレの時間も台無し

No, I won’t miss you, baby, yeah
だから、お前のことなんか恋しくないぜ


Ah, ah, ah-ah-ah

Lord, I miss you child
ああ、お前のことが恋しい

 「お前が恋しい」が「恋しくない」に転じるラスト。これを一般に「強がり」というわけで、いろんな矛盾をロックはむしろ味わうことができるんだぜ、というメッセージにわたしは受け取っている。

業務連絡

 9月12日と13日は大学のお祭り「芸工祭」です。今年は、このコラム「かんがえるジュークボックス」の新作ステッカーと、学期中に開催している「サブカル映写会」のステッカーを販売します。なお、12日まで学会で出張のため、販売ブースが出るのは13日のみ!本館211教室におります。ぜひお買い求めください。これまでのグッズも放出!買いそびれた方、買い足したいという方もぜひ!

販売予定の新ステッカー
販売予定の新ステッカー(1枚たったの100円なり!)

 また、我がバンド、連弾とテルミンの「夕ヶ谷姉妹」はまだ活動休止中ですが、ピアノとテルミン(プラスたぶん他の楽器)の別ユニット「ザ・ティーチャーズ」の演奏も朝一番の能舞台で予定しています。もう一度言おう!9月13日(日曜日)の朝10時頃!ぜひ遊びに来てください。

それと、本コラムも今号で48号を数えた。区切りの50号も目前。それを記念して、これまでこのコラムで扱ったレコードのジャケットすべてを展示する記念展を後期の授業が始まる10月に開催予定。リスニングパーティーも開く予定。そちらもぜひお楽しみに!

 それでは、次の1曲までごきげんよう。
 Love and Mercy

(文・写真:亀山博之)

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亀山博之(かめやま・ひろゆき)
亀山博之(かめやま・ひろゆき)

1979年山形県生まれ。東北大学国際文化研究科博士課程後期単位取得満期退学。修士(国際文化)。専門は英語教育、19世紀アメリカ文学およびアメリカ文学思想史。

著書に『Companion to English Communication』(2021年)ほか、論文に「エマソンとヒッピーとの共振点―反権威主義と信仰」『ヒッピー世代の先覚者たち』(中山悟視編、2019年)、「『自然』と『人間』へのエマソンの対位法的視点についての考察」(2023年)など。日本ソロー学会第1回新人賞受賞(2021年)。

趣味はピアノ、ジョギング、レコード収集。尊敬する人はJ.S.バッハ。