まちなかに新しい学生街をつくる/準学生寮プロジェクト

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2019年10月1日、山形市の中心市街地のとあるビルで、改修工事が始まり、“まちなかに新しい学生街をつくる”という日本初の試みがスタートしました。

山形市も他の地方都市と同じように、中心市街地には空き店舗が目立ちます。一方、東北芸術工科大学(以下、東北芸工大と略)と山形大学では、毎年新入生の約7割が県外から入学します。

「空き家・空き店舗をリノベーションして、学生が安く住める寮にしたらどうだろう。違う環境で育ち、違う分野を学ぶ学生同士がまちなかで一緒に暮らし、“山形で学ぶことは楽しい”という雰囲気をつくっていけないものだろうか」――東北芸工大学長と山形大学学長との間で行われた、こうしたやり取りの半年後、“まちなかに新しい学生街をつくる”「準学生寮計画」は動き出しました。

「学生寮」ではなく「準学生寮」

本学の中山ダイスケ学長が山形県にこの計画を相談すると、県と山形県住宅供給公社(以下、公社と略)は、国の「住宅セーフティネット制度」を活用した準学生寮整備の仕組みをつくってくれました。そして、山形県、山形市、公社、山形大学、芸工大の五者が一体となって、プロジェクトは本格化しました。

本事業の仕組みを説明します。この事業に賛同する空き物件のオーナーの方々に、私たちはリノベーションプランと投資回収計画を提示します。合意された場合、オーナーは山形県・市から改修費一室あたり最大200万円の補助を受けることができます。仮にビルを改修・リノベーションして10部屋を整備した場合には、2,000万円の補助が受けられることになります。

アズ七日町前の交差点を東に入ったところにある「七日町一番街」。この小路は歩道が石畳風で、洒落た雰囲気。その一角に、今回準学生寮として改修中のビルがある。

オーナーになられる方々は、アパート管理の経験のない方がほとんどです。そこで、公社が物件を借り上げ、大家の代行をします。仮に空室が発生しても、オーナーには家賃収入が保証されます。オーナーにとって、これまで何も価値を生まなかった空き物件が、家賃という価値を生むことになります。
大学は入居者を優先的に斡旋します。大学が直接管理しない賃貸物件なので「準学生寮」というわけです。

この準学生寮事業の仕組みは、現在全国から注目されており、講演依頼や視察のほか、全国のメディアから取材の申し込みを多数いただいています。その理由を、事業の設計に関わった、山形県建築住宅課の鈴木淳一(すずき・じゅんいち)課長補佐に伺いました。

鈴木さん:「人口減少に伴う中心市街地の衰退と増え続ける空き家問題は、日本中の街が抱える共通の課題だと思います。今回、大学から準学生寮の計画を伺い、空き家を賃貸住宅として活用する「住宅セーフティネット制度」を応用することで、二つの課題に対応できると考え、提案させていただきました。本県では、全国で唯一、住宅セーフティネット制度の入居対象者に『若者単身者』を設定しています。これにより学生寮への応用が可能となりました。
全国から注目を集めているのは、学生寮以外にも外国人労働者や新規就農者向け住宅など、人口減少対策としてセーフティネット住宅を活用できる可能性が感じられたからではないでしょうか。」

私たちは、空き物件のオーナーの方々に集まってもらい、準学生寮事業の説明会を開催しました。
まちの空き物件をリノベーションして、学生のシェアハウスなどにしていけば、中心市街地の再生と若者によるコミュニティ活動が生まれる。“まちなかに新しい学生街をつくる、まちづくりの当事者になってほしい”
こうした事業のビジョンと制度についてご説明しました。

この説明会の参加者の一人、㈱リズムイノベーションの一級建築士・今野勝敏(こんの・かつとし)さんは、ビジョンに共感してくださり、自身の所有するビルの3フロアを準学生寮に改修する意思を固めてくれました。今野さんは、大学生を対象に、現地見学とヒアリングの場を設け、そこでの意見を取り入れながら、改修プランをまとめました。当初はバス、トイレは共用のシェアハウスにする計画でしたが、部屋数を減らし、シャワーブース、トイレ付き個室のプランに変更しました。リノベーションされた今野さんのビルは、11月下旬に一部内覧可能です。

準学生寮化される七日町本町のビルのオーナーで、一級建築士の今野さん。リノベーション設計もご自身の手によるもの。
気持ちの良いテラス。七日町大通りから至近距離にあることが分かる。
現在工事中の建物内部。この空間がどう生まれ変わるのか、楽しみにしていてほしい。

今年度中に、準学生寮として計25室が整備されます。今野さんのビルを個室型に、山形駅の近くの一軒家を、男子学生向けのシェアハウス型にそれぞれ改修します。来年も20室以上を目標に、空き物件を準学生寮化していきたいと思います。
準学生寮物件は、統一ブランド名を「山形クラス」とし、今後も中心市街地の限定されたエリアで増やしていきます。

準学生寮として整備された各建物が、この「山形クラス」を冠することになる。例えば、今野さんの建物は「山形クラス 七日町一番街」になる予定。

他大学の学生や留学生とまちなかに暮らすこと

準学生寮での生活は、例えば、育った環境も学ぶ分野も異なる他大学の学生との交流をとおして、さまざまな機会で相互に刺激を受け合えるものになるかもしれません。アルバイト先も徒歩圏内にたくさんあります。

山形国際ドキュメンタリー映画祭や山形ビエンナーレなど、街なかで行われる文化イベントに参加するのはどうでしょう。町内会のイベントにもぜひ参加してください。年齢の異なる街の人たちと顔見知りになり、通りやカフェで挨拶する人が増えれば、このまちは第二の故郷になっていくでしょう。

2019年10月25日から、準学生寮の入居者募集を開始しました。入居を希望される学生のみなさんは、下記の募集要項で、申し込み要件を満たしているかをご確認のうえご応募ください。12月上旬に公開抽選会を行います。
また、対象エリアに空き物件を所有されている皆さま、ぜひ準学生寮化をご検討ください。
(企画広報課・五十嵐)

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東北芸術工科大学 広報担当
東北芸術工科大学 広報担当

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