毎日の丁寧な暮らしを積み上げた先にある「今」/卒業生 伊藤玲子(bicco tacco主宰)

コラム

東北芸術工科大学校友会では、2020年8月より、本学でアートやデザインを学んだ卒業生たちの「今」を紹介するリレーインタビュー「TUAD OB/G Baton」(ティーユーエーディ・オージー・オービー・バトン/TUADは東北芸術工科大学の英語表記の略称)をスタートします。

1992年に開学し、2021年で30周年を迎える本学の卒業生は現在1万人を超えました。彼らの1万通りの日々と歩まれてきた人生をインタビューと年表でご紹介します。

※「GG」では、芸工大と卒業生のみなさんを再びつなぐ「TUAD OB/G Baton」を、今後もサポートしていきます。

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一生「ものづくり」と共に

「bicco tacco」は、彼女が生まれ育った地方で使われている、左右不揃い、不均一な、という意味の言葉です。一人一人、一つ一つが違うこと。手仕事で出来上がるものはもちろん、皆同じように見える工業製品でさえも、実は一つ一つが違っています。作り手から使い手に渡り、その人の手や生活に馴染むことで愛着が湧き、よりいっそう、唯一無二の存在となります。「bicco tacco」という名前にはそんな思いが込められています。

伊藤玲子

花びらをモチーフとした柔らかな色合いのアクセサリー。身に付けると優しい気持ちに。

――伊藤さんの芸工大での思い出を教えてください

初めての一人暮らしやアルバイト経験と、良い仲間や先生との出会いがありました。普段の授業や、デザインイベントへの参加、卒業制作なども、実りある楽しい思い出です。

――アクセサリー制作活動を始められたきっかけは?

小さい頃から工作や絵を描いたり、自分の手で何かを生み出すものづくりが好きでした。娘の出産をきっかけに、仕事で培ったことや、趣味で続けてきたものづくりを生かせる活動をしようと決意し、勤めていた会社を退職して、本格的に「bicco tacco」を立ち上げてアクセサリー制作を始めました。

伊藤玲子

――現在はどのようなところで購入できますか?

主にインターネットでの販売が中心ですが、あるハンドメイドアクセサリーイベントに初出店した時に販売していた「あじさい蝶々のブローチ」を雑貨店のオーナーの方に気に入っていただいたことがきっかけで、実店舗での委託販売もできるようになりました。活動範囲が開けてきています。

――制作活動を続ける心持ちを教えてください

独立して間もなく、旅先のカフェで自分がデザインした製品が使われているのを見かけて感動したことがありました。日々楽しみつつ丁寧なものづくりを続けること、使ってくださる方への感謝を心がけています。

植物との関わりを制作のインスピレーションに

――日々楽しみにしていることや、今、面白いと感じていることはありますか?

最近は、植物を育てたり自然を観察することが楽しみです。そこからインスピレーションを受け、周囲にある植物を自分の手でドライフラワーや押し花にして制作しています。あとは日々、子どもたちと工作をしたり、最近では「あつまれどうぶつの森」(任天堂のオンラインゲーム)などもやっています(笑)

――このコロナ禍で制作活動が左右される状況もあったと思いますが、今後はどんな展開を想像していますか?

まずはまたものづくりに集中できる環境を整えたいと思っています。長い目での展望は、一生ものづくりと関わりながら、誰かの役に立てるような活動がしたいと考えています。

伊藤玲子
伊藤玲子さんの自分クロニクル。一つ一つの出来事をしっかりと味わってから次のライフステージへと歩みを進めていく、とても丁寧な印象。

――在学生へのメッセージを

勉強も、友だちとの遊びも、バイトも思いっきり楽しんでください!やってみたいこいことをどんどんやってみましょう!心配や不安を乗り越えた先には、必ず何倍もいいことが待っています。

bicco tacco

編集後記

「心地よいアンバランスな君へ」

私の友人でもある彼女と出会ったのは今から…年前のまだ十八歳の春。3年生、4年生と同じ渥美ゼミで学び、共に過ごす時間が増える中で、彼女がとても「静かにストイック」であることに気が付きました。表面上はとても穏やかで、しかしながらよく目を凝らすとその内にメラメラが見える、そんな印象です。

器用に立ち回るタイプではなかったと思いますが、丁寧でよく手が動き、何より柔軟であることが最高に魅力的な人でした。そんなアンバランス(良い意味で)な彼女が作り上げる丁寧で不揃いなアクセサリーは実に彼女らしく、身に着けているといつも褒められるので、友人であることを差し引いても私が推したいアクセサリー作家の一人です。

私も含め、子どもを持つと優先順位は自ずと変わり、自分のことは大抵後回しになりがちですが、そんな中でも「ものづくり」を続け、そのスタイルを続けてきたストイックさ。彼女のそんな小気味良さを見習いたいと思っています。

菅野あや(デザイン工学部生産デザイン学科 卒業生)

制作協力:東北芸術工科大学 校友会
インタビュー・編集:菅野あや(東北芸術工科大学校友会 事務局)

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東北芸術工科大学 企画広報課
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