菅原七翔|戦争遺跡の保存と活用の意義 ―仙台市とその周辺地域に点在する防空壕を事例に―
宮城県出身
松田俊介ゼミ
十菱・菊池(2002)によると、戦争遺跡とは「近代日本の侵略戦争とその遂行過程で、戦闘や事件の加害・被害・反戦抵抗に関わって国内国外で形成され、かつ現在に残された構造物・遺構や跡地のこと」と定義づけられている。数ある戦争遺跡の中でも防空壕は、空襲という直接的な戦争被害から市民の命を守るために築かれた避難施設であり、市民生活と戦争との接点を象徴する存在である。しかし、防空壕の多くは老朽化や都市開発の影響により姿を消しつつある。本研究では、失われつつある戦争の記憶を継承してきた戦争遺跡の保存と活用の意義について今一度、筆者が居住している仙台市とその周辺地域に点在する防空壕を事例に明らかにしていきたい。
仙台市内中心部の西公園近くには、国内最大規模とされる民間用防空壕が残されている。(図1)また山形県東根市神町には、横穴式の若木山防空壕が市史跡として現地の民間団体の若木山防空壕保存会と市が一体となって保存・活用を行っており、定期的に内部の一般公開がなされている。(図2・図3)
筆者は、仙台・空襲研究会代表のN氏・S氏と、若木山防空壕保存会代表T氏に防空壕に関するインタビュー調査を行った。調査から得られた両者の課題点として、N氏・S氏は「行政に文化財保護に向けた施策を打診しているが、都市計画や安全上の問題により難しい」と述べ、T氏は「会員の高齢化と当時の記憶を知る人が年々減少しており、継承に大きな懸念がある」と述べられ、行政と民間でそれぞれ異なる課題点を抱えていることが分かった。 課題点を踏まえて防空壕を次の世代へと継承するためには、行政と民間の双方が協力し合い役割を分担しながら保存と活用を進める体制を整えることが必要と考える。まず行政では教育機関との連携や安全面の確保、保存の制度設計を担い、民間では若い世代が身近な歴史として関心を持ちやすい環境を作る。例えば、地域学習などでVR映像や3Ⅾスキャンデータなどのデジタル技術を活用することで、老朽化が進み立ち入ることが難しい防空壕の内部を安全に誰でも閲覧することが可能となる。以上のように行政と民間の協働体制を整え教育機関との連携やデジタル技術の活用を進めることで、防空壕を一事例とした戦争遺跡を保存・活用していくことは、次世代に失われつつある戦争の記憶を継承していくための「語り部」としての意義を帯びていくであろう。

1. 国内最大規模とされる民間用防空壕内部

2. 若木山防空壕内部

3. 若木山と防空壕平面図