志斉真尋|西ノ前型土偶における土偶破壊説の検討 -縄文時代中期・南東北を中心に-
山形県出身
佐藤祐輔ゼミ
西ノ前型土偶とは縄文時代中期の南東北地方に分布した、扁平な上半部に出尻型の特徴を持つ、有脚立像土偶である。土偶の多くは、欠損・破損した状態で出土しており、こうした状況は他の土偶にも共通し、研究者の間では、土偶が呪術・儀礼的行為により土偶を故意に壊れたとする「土偶破壊説」が提示されてきた。しかし、明確な結論には至っておらず、西ノ前型土偶の見解も少ない。本論は、西ノ前型土偶と土偶破壊説の研究史を整理したうえで、出土資料の観察および焼成実験、破壊実験を通じて、西ノ前型土偶における土偶破壊説を検討することを目的とする。
6遺跡を対象とし、資料の分析・観察を行った(図1)。分析の結果、焼成中に事故割れしたとみられる土偶が確認された(図2)。そのような偶発的要因によって、完形資料が少ないと推測される。また、土偶内部には生焼け状態が推測され、壊れやすさや風化を促進する要因と考えられる。さらに、上半部の破損面には真っ直ぐに割れ外部からの圧力が想定されるものと(図3)、斜めや不規則に割れた自然的破損とみられるものが存在し、破損形態から故意破損と偶発的破損の双方が推測された。以上より、西ノ前型土偶の破損には偶発的要因が大きく関与する一方、故意的破損の可能性も否定できない。
以上の仮説を踏まえ、偶発的破損を検証するため、焼成実験を2回行った。1回目は乾燥期間を変えて水分量の違いによる事故割れの発生を検証したが、破損は確認されなかった。2回目は乾燥期間を短縮し混和剤を減らした結果、事故割れや欠けが生じ、水分量が多い状態での焼成は破損しやすいことが認められた。しかし、事故割れしたものは1 点のみであった点から、破損割合の少なさ明確となり、西ノ前型土偶において焼成段階での偶発的破損は少ないと推測する。偶発的破損、故意破損の双方を検証するため、 レプリカを用いて破壊検証を行なった。もぎ取り法による故意破壊は割れ面が真っ直ぐかつ横段面 に斜めの痕跡を伴うのに対し、落下など偶発的破損は斜めで不規則な破損面を示す結果となり、観察した資料と実験結果資料の類似性が認められ、西ノ前型土偶の上半部は故意に破壊されていた可能性が高いと結論付けた。 以上により、西ノ前型土偶の分布圏では、上半部を意図的に壊した様相を窺うことができると共に少なからず、偶発的破損もあったことが示唆される。

1. 対象遺跡の分布図

2. 事故割れとみられる資料

3. 真っ直ぐに割れた資料