歴史遺産学科Department of Historic Heritage

烏眞尋|新たな葬法と埋葬におけるポストモダン化 ―山形県内の樹木葬を事例に―
山形県出身
松田俊介ゼミ

現在の日本では、墓石に「先祖代々」などと刻まれた墓(以下「家墓」)への埋葬が主流で、家族による承継や管理が前提とされている。しかし1990年代以降、散骨や樹木葬に代表される、埋葬方法(以下「新たな葬法」)が登場した(図1)。それらが選ばれる理由について、先行研究では様々な観点からの分析がなされているが、実際に選んだ人から聞き取りを行った研究は僅少であるため、その理由は実証的と言い難い。よって本研究では、山形県での樹木葬を対象に、先行研究とインタビューより得られた意見を照らし合わせ、樹木葬が選ばれる理由を明らかにした。

「新たな葬法」が選ばれる理由について、本研究では先行研究より、①跡継ぎ不足、②祖先祭祀意識の薄れ、死生観の変化、③個人化の進展、市場原理の浸透、④家族への負担、⑤エコ意識、環境配慮の5つに大別した。

調査は、樹木葬墓地に携わっている河北町南泉寺住職A氏、葬儀社Bの担当者へのインタビュー、ならびに現地の樹木葬の事例調査も行った(図2・3)。また、県内の事例ではないものの、樹木葬墓地を選んだ当事者の意見も得られた。インタビューより、樹木葬が選ばれる(または選んだ)理由には、跡継ぎがいない、子どもへの負担がかからない、費用負担が少ないという意見が共通してあげられた。先行研究に照らし合わせれば、①「跡継ぎ不足」に該当する。墓掃除の必要がない、初期費用のみで済む、檀家にならなくてよいという意見については、④「家族への負担」に該当する。インタビューにおいて得られた意見には、家墓の承継が困難、家族に管理や費用等の負担をかけたくないという意見が傾向としてみられた。一方で、祖先祭祀意識や環境、自然についての言及はみられなかった。 今回調査した事例では、いずれも遺骨を埋葬する箇所に石のプレートが置くものであり、先述した樹木葬の特徴とは相違がある。また、新たな葬法の性格に「個人化」があげられるのに対し、調査事例においては2人ないし4人分の遺骨を埋葬するものもあり、家墓との共通点がみられる。家墓と樹木葬を分け隔てる大きな違いは、「承継を必要としない」点が強いといえる。墓および埋葬のあり方の多様化に伴い、「墓=継承される」という共通の価値観は崩れつつあるといえる。なぜ人を葬るのか、遺骨や墓はどうあるべきかなど、その意義を一人ひとりが考えていく必要があるだろう。

1. 明治期以降の日本における埋葬の外観図