岡部晏空|ススコゲからみた生石2遺跡出土土器の使用痕について
山形県出身
青野友哉ゼミ
山形県酒田市生石2遺跡は、県北西部庄内平野の北半部中央に位置する。洒田市街から東へ8km、酒田市生石を中心とした水田中にあり、標高は約12メートルを計る。(図1)東北地方における稲作文化の到来を示す遺跡として重要視されており、これまで東北芸術工科大学が発掘調査を行っている。
本研究では主食調理方法を復元するための要項を、①形態分析とスス・コゲ分析、②スス・コゲの形成過程を解明するための土器を用いた調理実験、③炊飯や米蒸しの基本特徴とバリエージョンを明らかにし、違いを生み出した理由を解明するための米調理民族誌の比較分析、④調理食材を復元するための理化学的分析、を組み合わせた研究プロセスを活用し、生石2遺跡から出土した土器と比較を行い、観察した土器の痕跡から弥生時代初期に稲作を行っていたとされる生石の人々が土器を用いて米を調理したか否か分析を行った。
2025年6月26日・10月29日に実験を行った。その際には粘度の低い品種である「タイ米」と粘度の高い品種である「ジャポニカ米」を使用し、ブロックの上に土器を直置きし、四方を薪で囲んで加熱を行った。使った土器は3個で、「ジャポニカ米」を「炊き干し法」で調理した土器を土器A、「タイ米」を「炊き干し法」で調理した土器を調理した土器を土器B、「タイ米」を「側面加熱蒸らしを伴う湯取り法」で調理した土器を土器Cとした。(図2)土器Cは吹きこぼれ直後に土器を傾けて湯取りを行い、5分ごとに回転させて加熱を行った。秋の実験でも同様の調理方法であったが、米と水の比率を増やした。
夏の実験ではどの土器でも吹きこぼれが起きず、土器Aには内面にコゲが生じたが、土器B、Cではコゲは生じなかった。土器Cでは湯取りの痕跡がみられた。秋の実験(図3)では全ての土器で吹きこぼれが起き、外面にも吹きこぼれ痕がみられた。特に湯取りを行った痕跡である「斜め白吹き」が土器Cにみられたことからも、土器Cは生石2遺跡出土土器に湯取り法炊飯の痕跡を確認するための比較対象になる土器として扱うことができる。 実験後、生石2遺跡出土土器との比較を行ったが同じ痕跡を確認することができなかった。しかし、容量の違いや内容物の違いなどの検討を行うこと、そして遺跡での発掘資料を調理方法の観点で分析する点に関して本研究は有効性を示すものと言える。

1. 生石2遺跡発掘区域

2. 調理実験用土器(左からA、B、C)

3. 秋の実験の様子