池田綾音|考古学的資源の教育的活用とその有用性について
宮城県出身
青野友哉ゼミ
発掘体験や出⼟品観察などといった考古学分野における活動は、地域教育や文化財教育の面で、⼦どもたちの実践的な学びに大きく貢献できる可能性を有している。しかし、佐竹(2019)の先行研究では、学習効果の検証が十分にできていないことが指摘された。
現在求められるのは、指導に当たる人物の専門性や教育経験に左右されず、再現性を確保しつつ一定の学習効果とその検証を可能にする仕組みである。これを可能にするためには、考古学的観点から評価する、独自のルーブリックが必要と考えた。
まず、久保田(2006)の示す方法論を分析すると、コルブの経験学習論(具体的経験 → 省察的観察 → 抽象的概念化 → 能動的実験)やポランニーの論じた暗黙知の概念が見られた。(画像1)
これらの一致を再分析すると、久保田の評価観点には①観察する目 ②推測する力 ③身体を使った習得の3つがあることがわかった。これを元に、制作体験学習に向けたルーブリックを作成した(画像2)
また、遺構の発掘体験などを通して考古学的手法そのものを学習する場合は、
①視覚的観察の精度 ②推論の妥当性 ③批判的感受性、補助的観点として ④探究への主体性 ⑤記録および表現の質 ⑥歴史的文脈の6項目が必要と考えた。(画像3)
本ルーブリックのような評価基準は、特定の分野に対する知識量ではなく、物質資料及びそれに関する科学的データから考察するための能力の測定が中心である。これは、歴史科や図工科、古典などのその他の教科でも部分的には扱われるものの、物的資料を直接扱う考古学が特に担っている性質と言える。そのため本評価観点は、学校教育のみならず、一般参加者に対しても教育的効果をもつものと言える。
歴史教育・文化財教育・地域教育といった既存の枠組みにおいて、考古学に関わる体験活動は一定の役割を担ってきた。しかし、実際にはこうした領域に限定されない、より広い教育的可能性を含んでいる点こそ注目すべきである。 情報の真偽を見極め、妥当な判断を行う力が問われる現代において、このような「物から世界を読み解く」思考方法は重要性を増している。他教科では扱いにくいこの特性こそ、考古学が教育現場に提供し得る独自の価値と言えよう。

1. 久保田(2006)の用いた方法論

2. ルーブリック(筆者作成)

3. 学習評価の6観点