文化財保存修復学科Department of Conservation for Cultural Property

渡邊アリアナ|山形城と青葉城からみるVR再現の比較研究
宮城県出身
宮本晶朗ゼミ

 近年、文化財をデジタル空間上に記録・保存する「デジタルアーカイブ」の重要性が急速に高まっている。特に、かつての姿を視覚的に復元するVR(仮想現実)や、現実の風景に情報を重ね合わせるAR(拡張現実)技術は、実体のない遺構を可視化するための強力なツールとして期待されており、独自の取り組みやスマホアプリ、資料館での公開を含めれば、全国で100箇所以上の城郭がデジタルで再現されている。東北地方においても、様々な除格でこうした再現事業が行われている。主に、観光客への視覚的な魅力向上や失われた城郭を後世に残す教育的な記録・保存を目的として導入されている。しかし、それらが利用者の体験や歴史継承にどう寄与しているかの比較研究は十分ではない。

本研究は、山形城と青葉城を事例に、VR・AR体験が歴史的理解や印象に与える影響と課題を明らかにする。研究にあたり、まず両城での現地調査を行い、VR・ARサービスの操作性、再現度を検証した。(図1)(図2)(図3)その後、各城の来場者に対し、「歴史的理解のしやすさ」「映像のリアルさ」「城郭への興味向上」「地域活性化への貢献」の4項目について5段階評価のアンケート調査を実施した。

集計結果から、対照的な実態が明らかとなった。まず認知度において、青葉城は82%と極めて高いのに対し、山形城は48%と半数以下に留まっており、山形城においては「存在を広く知ってもらうこと」がおおきな課題となった。VR体験の内容に関する評価(5点満点)では、青葉城は歴史的理解のしやすさ(4.6点)、映像のリアルさ(4.4点)地域活性化への貢献(4.7点)といずれも非常に高い評価を記録した。青葉城では、映像に音声解説やガイドを組み合わせた完成度の高さが評価に起因していると考えられる。対する山形城も地域活性化への貢献(4.1点)や城郭への興味向上(4.0点)など、概ね良好な評価を得ている。しかし、自由回答では「スマホ画面の見えにくさ」や「歩きスマホの危険性」といった安全面での改善を求める具体的な声も寄せられた。 これらの調査から、山形城は教育・生涯学習に適した「教育型VR」、青葉城は観光客を惹きつける「観光型VR」として異なる役割を担うことがわかった。城郭VRは地域特性と目的に応じた設計により、文化継承と地域発展の両立をさせることが不可欠であると言える。

1.山形城本丸一文字門

2. 青葉城で貸し出しされているVRスコープ

3. 青葉城現地でのVR案内の立て看板