吉川桃好|ウォールボンドから放散される酢酸の消臭剤による除去検証
静岡県出身
村上智見ゼミ
文化財をはじめとする資料が保管される建物の内装や、一部の展示ケースには接着剤が使用されている。一口に接着剤といっても様々であり、その種類は多岐にわたる。このような内装材料に使用される接着剤の多くは、資料に影響を与えにくい素材で構成されている。しかし、接着剤の特性上使用を避けることが難しい物質もある。特に、内装材料に使用される接着剤は、生産コストや製品としての扱いやすさを鑑みて、酢酸重化合物の使用が避けられない場合が多い。この酢酸重化合物からは、資料を劣化させる酢酸が放散される。
酢酸をはじめとする、資料に害を及ぼす物質の影響を避けるためには、長期間の枯らしを行ったり、ケミカルフィルターをはじめとする有効な空調設備が必要である。しかし、高価なケミカルフィルターの導入や、24時間空調などを用いて温湿度管理を行うなどの、理想的な対応をすべての資料保管の場で実現できるとは限らない。
そこで本研究は、内装材料として使用される接着剤から放散される物質の1つである酢酸を対象に、消臭剤による簡易的な除去の有効性を調査し、展示空間における空気環境汚染への対処、および空気環境管理における簡易的な対処方法を検討する際の一助とすることを目的とし、内装材料に使用される接着剤からの放散物質の1つである酢酸の簡易的な除去において、消臭剤が有効であるか否かを検討した。
本研究に際し、接着剤からの酢酸放散量測定と消臭剤を用いた酢酸除去実験を行った。それぞれの実験で未硬化の接着剤と、硬化した接着剤を使用した。接着剤はシャーレに取り出したものを使用した。硬化済み接着剤を使用する実験のみ、シャーレに取り出してから乾燥させたものを使用した。試料を入れたデシケーターを密閉し、デシケーター内の環境を安定させるため24時間静置した後に、デシケーターとエアーサンプリングポンプを接続して空気採集を行い、気体検知管の数値から酢酸の量を確認した。 実験の結果、化学的消臭を用いた消臭剤を使用した場合、本実験に使用した消臭剤に含まれる成分とデシケーター内が高湿度環境であったことによって、酢酸の増加が確認された。一方で、物理的消臭を用いた消臭剤を使用した場合、未硬化の接着剤と硬化した接着剤の両方でデシケーター内酢酸の減少することが確認できた。

1. 使用した試料

2. 実験の様子1

3. 実験の様子2