三村陽祐|モルタル中の金属部材における表層からの腐食分布について
兵庫県出身
村上智見ゼミ
煉瓦造建造物は幕末から明治期にかけて広まり、大正時代までの間に数多く建設された。その中で、今日までその姿を現代に残している煉瓦造建造物は近代日本を支え、現代の繁栄の礎になった貴重な歴史遺産・産業遺産となっている。そして、それらの中から特に歴史的、建築的価値の高い建造物は文化財として公的な指定を受け、保存・活用がされている。本研究は、煉瓦造建造物の壁内に水平方向に存在する金属部材の腐食による壁面の劣化に着目し、配置された金属部材について、表層からの腐食分布の傾向を明らかにすることを目的に行った。近代以降の煉瓦造建造物では、建設当初の構造材や後年の補強工事によって金属部材が壁内に埋設されている場合が多く、これらの腐食は亀裂や爆裂を引き起こし、文化財としての保存性を大きく損なう要因となる。しかし、煉瓦造建造物を対象とした金属腐食に関する基礎的知見は不足しており、非破壊的に劣化を把握するための指標も十分に確立されていない。
実験では、直径19 mm、長さ280 mmの鋼材磨き丸棒にモルタルを打設した試験体を複数作成し、湿潤乾燥サイクルによる劣化促進試験を行った。湿潤には水道水と3%塩化ナトリウム水溶液の二つの環境を用意し、24時間の浸水(図1)、48時間の乾燥を行った。各試験体にあらかじめ設定した回数の湿潤乾燥サイクルを行い、試験後モルタルを除去しサイクル数の増加に伴う腐食の進行傾向を観察した。評価観察は目視観察、マクロ撮影画像による腐食分布評価、画像解析ソフトを用いた定量化を実施した。(図2,図3) 結果、サイクル数の増加に伴い腐食は進行したが、その増加は環境条件によって大きく異なることが明らかとなった。塩水環境ではサイクル数の増加に伴い深部まで腐食が継続して進行したのに対し、水道水環境では表層から10mm以下で飽和する傾向を示した。特に下方向や側方で腐食が進行しやすい傾向が確認された。腐食分布は一様ではなく、方向性や局所的な集中が確認され、乾燥時の気流による影響が内部の腐食に大きな影響を与えることを示唆した結果が得られた。

1. 湿潤乾燥サイクル浸水時

2. 画像解析写真撮影

3. 画像解析工程図