小野寺楓|山形県における即身仏の保存の現状調査および適切保存環境についての研究
北海道出身
村上智見ゼミ
即身仏とは、一部の仏教宗派の僧侶が過酷な修行の末に自らの肉体をミイラ化させ、仏として祀られている存在や状態を指す。山形県内の寺院には多くの即身仏が現存し、現在も信仰の対象として大切に守られている。3年次の個人研究において、即身仏が虫の侵入や青カビなどの被害を受けている事例が確認されたが、即身仏の保存環境や管理方法に関する体系的な研究や報告は極めて少ないのが現状である。本研究では、即身仏の保存環境の現状を把握し、長期的保存を目的とした適切な温湿度条件と日常的な点検・管理方法を明らかにすることを目的とした。
調査は、立地や建築構造、空調設備や乾燥剤の有無といった条件の異なる三つの寺院を対象に、温湿度データの測定および害虫調査を行った。その結果、即身仏が収められているガラスケース内では、乾燥剤を使用している場合、ケース外部と比較して湿度が大きく低下することが確認された(図1)。また、木造で山間部に位置する寺院では年間を通して高湿度となり害虫の発生も多い一方、コンクリート造で空調設備を備えた市街地の寺院では湿度が比較的安定し、害虫の発生が少ない傾向が見られた。ヒアリング調査からは、衣替えの方法や乾燥剤交換の頻度が寺院ごとに異なり、管理方法が統一されていない点が課題として挙げられた。さらに文献調査では、過去に撮影されたX線画像(図2)から即身仏の体内に針金が残存している例が確認され、その鉄の劣化による骨格破壊のリスクが示唆されたほか、ガラス張りでないケースに収められている寺院では、虫や小動物の侵入、外気による劣化の危険性が高いことが考えられた。 即身仏は信仰対象であると同時に鑑賞の対象でもあり、信仰上の理由からケースを頻繁に開閉し内部を直接確認することが難しいという制約がある。その中で有効な保存対策として、ケース内に乾燥剤を設置することに加え、目張りによって気密性を高め、害虫の侵入を防ぐことが重要であると考えられる。また、衣替えの際に点検内容を記録として残すことで、経年変化の把握が可能となり、管理者が交代した場合でも円滑に保存管理を引き継ぐことができると結論づけた。

1. ガラスケース内外における温湿度データ

2. 体内に残存する針金