文化財保存修復学科Department of Conservation for Cultural Property

大澤りお|仙台大観音を中心とした巨大仏の調査-現地調査および意識調査を通して-
宮城県出身
宮本晶朗ゼミ

 日本各地に点在する像高40m以上の「巨大仏」の中には、造立から数十年を経て老朽化し、深刻な維持管理の問題に直面しているものも存在する。高度経済成長期に観光開発などを目的に造立されたこれらの巨大構造物は、かつては地域の繁栄を象徴するシンボルであった。しかし、時代の推移とともに管理主体の経営悪化や法的地位の曖昧さが露呈し、放置された個体が地域の懸念事項となってしまう事例が相次いでいる。こうした背景から、巨大仏を持続可能な形で地域に存続させるための対策が必要であると考えた。

 先行研究によって巨大仏は、戦前は国家の安寧を願った護国観音、戦後は戦没者慰霊を願った平和観音、高度経済成長期以降は観光目的の観光巨大観音などのように時代に応じて変遷を遂げてきたことが語られている。しかし、既存の研究の多くは造立の経緯や観光的価値の記述に留まっており、現代における維持管理の実態や、近隣住民が抱く威圧感や倒壊への不安が管理状況によってどう左右されるかは、明らかになっていない。

 本研究の目的は、管理体制の異なる複数の巨大仏を対象に、現地調査とアンケートによる意識調査を通じて、各地の巨大仏の保存管理状況や運営体制、地域の意識を調査し考察することである。具体的には、仙台大観音、会津救世慈母大観音、釜石大観音の3体を主軸に、全国8体を比較検討した。

 アンケート調査の結果、回答者の居住地と仙台大観音に対する印象の間には、顕著な相関関係が認められた。巨大仏が所在する仙台市内の住民からの回答ではネガティブな印象が過半数を占めている一方で、仙台市外の住民からの回答はポジティブな印象の割合が高い結果となった。定期的な修繕やその情報を公開し管理を透明化することで、得体の知れない巨大物といった印象からより公共的なものへと転換させることができると考察できる。さらに巨大仏への関心度を考察した結果、回答者の年代が若くなるほど巨大仏に対する関心が低下する傾向が顕著に見られた。特に20代・30代の若年層においては、「関心はない」とする回答が半数を超えており、高年代層との間に大きな意識の乖離が存在している。キャラクター化や撮影会の実施などを通して、若年層を呼び込む対策が必要であると考える。 結論として、巨大仏の保存管理において重要なのは印象の転換、メンテナンス計画の透明化、歴史的価値の再定義の3点が重要であると総括する。

1. 仙台大観音の外観の様子

2. 仙台大観音の胎内の様子

3. 居住地と仙台大観音に対する印象の比較