永川実季|愛知県名古屋市における文化財建造物の解説案内板の実態調査
長崎県出身
宮本晶朗ゼミ
解説案内板とは、文化財の歴史的背景、文化的価値などの情報をわかりやすく伝えるための情報媒体である(図1)。文化財建造物の場合、来訪者が歴史や建築的特徴、地域との関わりを理解する上で重要な役割を担っている。解説案内板に関する既存の研究では、主に多言語対応に焦点を当て、対象地域の現状を把握し課題を考察するものが多くみられた。どの対象地域においても様々な問題点が指摘されているが、名古屋市の文化財建造物を対象とした研究はみられなかった。こうした背景から、本研究では名古屋市内に存在する文化財建造物のうち、国指定重要文化財に指定されている18件と国登録有形文化財に登録されている123件、計141件を研究対象とし、これらに設置された解説案内板の調査を行う。収集した写真データの分析を行い、特徴と現状が抱える課題点を明らかにすることを目的とする。
現地調査の結果、全体の設置率は36.9%と低い水準であることが明らかになった。調査対象とした全ての文化財建造物に解説案内板が設置されているわけではなく、住宅やオフィス、料亭などの本来の用途で使用されている建造物、非公開または特別公開時のみ公開される建造物において設置されていない事例が多く確認された。また、調査対象となったほとんどの解説案内板には設置年の記載がなく、正確な設置時期を特定することは困難であった。この点は、維持管理を行っていく上で大きな課題であると考えられる。 考察として、現地調査で撮影収集した解説案内板について表記法、文体などの組み合わせを基準にタイプ分けを行ったところ、各タイプに一定の傾向がみられた。たとえば、日本語が縦書き・常体(である調)で記されている解説案内板は、社寺を中心にみられ、仏教や建築様式に関する専門的な用語が多く含む内容であった(図2)。一方、近年設置されたと考えられる解説案内板では、日本語が横書き・敬体(ですます調)で表記され、英語解説が併記されたタイプが多く確認された(図3)。以上のことから、解説案内板は全ての文化財建造物において設置が適切であるとは限らず、文化財の公開状態や所有者の意向に応じて柔軟に検討していくことが求められる。

1. 名古屋城に設置された解説案内板

2. 日本語(縦書き・常体)のみ

3. 日本語(横書き・敬体)+英語