大学院Graduate School

[優秀賞]
林谷美香|縫うことから立ち上がる布
山形県出身
深井聡一郎ゼミ
糸、羊毛、綿布、ポリエステル布、合成染料、天然染料

手仕事による糸の縫い目が、集合体になることで布を形成する独自の技法を用いた「縫布(ほうふ)」


酒井 聡 教授 評
林谷美香さんの『縫うことから立ち上がる布表現』は、水溶性基布を用いた独自技法により、縫い目そのものが構造体となる「縫布(ほうふ)」を創出した点を高く評価する。
特筆すべきは、表現の独自性である。従来の織や編とは一線を画し、「染色」と「縫い」の相互作用から生まれる一作一様の表情は、極めて高い希少性と美学を備えている。本制作は工芸と工業の狭間に立つ野心的な試みだが、デジタル化が進む現代において、手仕事による身体的痕跡や不均質さを残す意義を、作品の圧倒的な説得力をもって提示している。
何より、完成した布が放つ風合いが素晴らしい。技法の探究に留まらず、素材としての美しさが鑑賞者の感覚にダイレクトに響く点は、作家としての優れた資質を物語っている。理論と感性が見事に結実したこの成果を、心から祝福したい。優秀賞、おめでとう。