[優秀賞]
田中康晴|光刻(みつとき)
青森県出身
岩井天志ゼミ
アニメーション
私たちが思い出す「記憶」とはどのように形作られていくのだろうか。「記憶」を「身体に刻まれた記録」と捉え制作した、版画を用いたワンカットアニメーション。
岩井天志 教授 評
『光刻 (みつとき)』は、版画アニメーションという手法を用い、「忘れられていく記憶」を、刻む行為そのものとして可視化した意欲作である。物語は、作者自身が版木を彫る「現在」の行為から始まり、光や風、匂い、音といった、これまでの人生で身体に蓄積されてきた感覚的な記憶を、闇の中の閃光を捉えるがごとく刻み込んでいく。約1400枚に及ぶ作画をすべて版木に手彫りする制作過程そのものが、触覚を通して失われかけた記憶を呼び覚ます行為として作品に深く結びついている。やがて映像は幼少期の記憶を越え、生まれる以前の人類や生命の記憶へと展開し、4分間をワンカットで構成したメタモルフォーゼ表現が、時間と存在の連なりを強く印象づける。壁面を版木で覆った展示会場は洞窟や胎動を想起させる空間となっており、実験的なサウンドデザインとも相まって、触覚的で宇宙的な世界観が立ち上がっている。2年次より一貫して版画によるアニメーション制作に取り組み、これまでの成果と探究を卒業制作として結実させた点も高く評価される作品である。