[最優秀賞]
五十嵐莞奈|風のゆく先で
山形県出身
岩井天志ゼミ
アニメーション
家族の決定に翻弄され、自分で選べなかった人生を振り返る祖母・美知子。ある手紙をきっかけに、過去と現在、祖母と孫の時間が静かにつながり始める。風にさらされながらも、人はどこで、どんなふうに生きる場所を選ぶのか。世代を越えて受け継がれる迷いと決意を描く、選択の物語。
岩井天志 教授 評
『風のゆく先で』は、秀逸な脚本と無駄のない構成によって、アニメーションならではの時間表現を見事に成立させた作品である。作者自身の祖母の実話をもとに、孫として祖母を元気づけたいという誠実な思いが、時空を超えた往復書簡という設定に昇華されている。
現代を生きる孫が、同年代の20代だった若き日の祖母に手紙を送り、応援することで少しずつ心を取り戻していく構造は、家族の愛や支え合う関係性をしっかりと描き出している。山形・庄内の風景を背景にした温かみのある手描きアニメーションに加え、SNSやメールが当たり前となった現代において、時間をかけて想いを届ける手紙や紙飛行機をモチーフとした表現も、本作の世界観を豊かにしている。複雑な設定を14分30秒という時間に落とし込むため、何度も脚本を改訂し、ゼミでの対話を重ねた制作過程が、本作の完成度につながった。個人的な体験を起点としながらも、多くの人に共有されうる物語として丁寧に編み上げられた作品となった。